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 フランスでは、保健省の発表で3月8日午後3時時点で、新型コロナウイルス(COVID-19)感染者は1,124人、死者も19人に達したことを明らかにしました。オリビエ・ヴェラン保健相は「1,000人以上の集会を全て禁止する」との方針を表明しました。

 フランスの感染者は7日から8日午後の24時間で117人、6日から7日に掛けては336人も増えていました。50人以上が集中治療室にいるとも報告されています。

 フランス保健省が、COVID-19の顕著な感染拡大をしていると定義している国や地域は、中国(中国本土、香港、マカオ)、シンガポール、韓国、イタリア3地域(ロンバルディア州、ヴェネト州、エミリア=ロマーニャ州、ピエモンテ州)、イランです。

 フランスの欧州・外務省は、緊急性のない中国への渡航を禁止し、中国に住んでいるフランス国籍者も特段の理由がない限り、帰国を一時延期するよう呼び掛けています。感染がヨーロッパで最も拡大しているイタリア(ロンバルディア州、ヴェネト州、エミリア=ロマーニャ州、ピエモンテ州)、韓国、イラン、シンガポールに対しても、重要性のない渡航を全て延期することを勧告しています。

 さらに一般市民も1日2回の検温、定期的な手洗いやアルコール消毒、虚弱な人々(妊娠中の女性、慢性疾患、高齢者など)との接触を避け、虚弱な人がいる場所(病院、産院、高齢者向けの宿泊施設など)を頻繁に出入りすることも避けるよう注意喚起しています。

 また、多くの人々が集る大規模な集会、レストラン、映画館などへの外出は避けるよう呼び掛けています。毎週末、各地域で開催される青空市場も開店が禁止されており、違反すると罰金を支払うことが定められています。

 原則、症状がない働いている人や学生は職場に行くことはできますが、可能であれば、テレワークを選択することを推奨しており、実際、テレワークを導入している会社も少なくありません。さらに呼吸器感染症の徴候(発熱または発熱、咳、呼吸困難)がある場合、汚染拡散を避けるため、医師や救急病院に電話せず、直ちに救急医療救援サービス(SAMU)と連絡を取り、指示に従うよう呼び掛けています。

 フランスには、感染症拡大の危機管理として、病院や高齢者施設などが迅速に対応するための危機対応システムが定められています。ホワイト・プラン、ブルー・プランいうものです。ヴェラン保健相は7日、関係施設にプラン実行に移行するよう指示したことを明らかにしました。

 ホワイト・プランは、病院経営者によって事前に作成された危機管理のアクティブプランで、病院は危機対応のため、所属する医療スタッフと医療機器を例外的に総動員する体制に切り替えるというものです。無論、自治体首長と医療機関が連携して対応することにもなります。

 ブルー・プランは、老人福祉施設を含む社会支援施設を対象に社会支援組織のトップの責任下で開発されたアクティブ・プランです。危機に直面した場合を前提に効果的に手段を迅速かつ首尾一貫して組織的に行うものです。ホワイト・プランもブルー・プランも明確なプロトコルが定められています。

 すでに新型コロナウイルスの感染拡大により、フランスの各病院でホワイト・プランが開始される一方、地元の状況に則した柔軟な適応を保健省は通達しています。具体的には、このシステムにより、危機管理部隊が設置され、引退した医師や看護師、今は医療に従事していない医師や看護師、医学生などを医療予備役の制度も活用されている。

 「ホワイト・プランは、危機対応を通常業務に優先させ、収容能力を増やすためベッドを追加し、医療専門家チームの通常勤務時間を必要に応じてシフトを変え、必要なスタッフ確保を最優先するもので、パリの病院などでホワイト・プランが実施に移されている」とヴェラン保健相は説明しています。

 無論、問題はこれらの危機対策は政府と官僚が主導し実施するもので、現場が混乱する可能性は十分ありますが、フランスは他の欧州諸国同様、過去のペストの大流行を経験したこともあり、国の安全保障に関わる有事という認識から各国で明確や法整備や危機管理マニュアルが存在しています。

 無論、正体不明の目に見えないウイルスとの戦いで、どんな対策が功を奏すかは手さぐりですが、要請や勧告ではなく、罰則のある命令も含まれています。呑気に構えていた義妹のジャックリーヌでさえ、「政府のいうことに従うだけ」と変わり身の速さに驚かされました。

 私の個人的懸念は、フランスは世界保健機関(WHO)の発表にかなり忠実なことです。今回の世界的感染拡大は、中国に8割のインフラ整備を委ねるエチオピア出身のWHOのテドロス事務局長が、習近平に目一杯忖度し、事実を隠蔽し、初動を間違ったために深刻化したことは否定できません。

 そのためWHOの認識に最初から疑いを持つアメリカなどは独自の調査を進めてきました。しかし、弱小の欧州は国際機関を信奉しており、そこに巣くう中国の魔の手を理解していません。その意味でフランスも対応が遅れた可能性があります。

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