欧州に進出している外国企業は非常に多いのですが、鳴り物入りで工場を誘致し、マスコミを賑わしたと思ったら、撤退時には大きな社会問題となって、マスコミに批判されるケースが多く見受けられます。
工場誘致では雇用を生むわけですから、当然、歓迎されるわけですが、引き際はさまざまです。金融危機による景気後退で、特に自動車産業のような規模の大きい製造業は、大きなダメージを受けています。製造ラインの期限付停止はいい方で、大規模な解雇や生産拠点の整理統合がおきれば、多くの失業者を出すことになります。
そうなれば自治体との話し合いも必要ですし、問題が発展すれば、政治問題化し、政府が介入するケースさえあります。時々、その撤退時の日系企業の手伝いをすることもありますが、正直驚かされることは、大企業でも、その国の雇用制度や労働法、工場撤退に関するルールを十分に知らずに進出しているケースが多いことです。
無論、それは日系企業だけではありません。例えば、数年前、某韓国企業大手の工場が撤退した時、残された資材や機材等の所有権をめぐり、大きな問題が生じたことがあります。その時、なんと誰かが、工場に火をつけて、跡形もなく燃やしてしまう暴挙に出る事件がありました。
ブルターニュから撤退した日系家電メーカーも、従業員の再雇用への努力がなかったとして、地元紙でさんざん叩かれたことがあります。スペインでは今、日系自動車メーカーのリストラ問題がマスコミを騒がせています。無論、経営的に当然の処置なのですが、労組との戦いは熾烈です。
フランスやスペイン、イタリアなどの労組は、加盟率は少なくても行動は過激で、何をしでかすか分かりません。雇用制度と社会保障制度が連動しているというような社会事情を十分に理解した上での対処が要求されます。