1713b7bf.JPGIMFのストロスカーン専務理事も論理的で雄弁な政治家だ。

 

一般的に日本人に比べ、欧米人は言葉に非常に大きな重みを置いていると言われています。特に政治家のメッセージは、その一言一言が政治を大きく左右し、外交にも大きな影響を与え、ビジネスの世界でも言葉は最重要と言えます。

 

最近、繰り返しブレトンウッズ構想をぶち上げているフランスのサルコジ大統領は「ドルが基軸通貨の時代は終わらせるべき」「米国一国支配の時代の終焉」「IMFを強化し、世界の金融システムの再構築」などの内容を、さまざまな場所で繰り返し訴えています。今月15日に閉幕したワシントンの金融サミットでも同様でした。

 

思い出すのは、イラク攻撃にフランスが反対した時、ほぼ毎日、シラク大統領(当時)は、「武力攻撃をするだけの証拠と理由が認められない」「全ては国連の場で決めるべき」というフレーズを繰り返したことです。

これは実は、方針が変わっていないというメッセージを毎日でも流し続けることの重要性からです。逆に言えば、方針転換も事情によってはありうるわけで、それがないことを言い続けることも重要だからです。

 

最近では、国際通貨基金(IMF)のストロスカーン専務理事(元仏財務相)が、「世界の主要国は実効性のある景気刺激策を徹底して取るように」というメッセージを繰り返しています。日本の麻生首相などは、記者団が同じ質問をすると「何度も同じことを言わせないでくれ」と憮然とした態度になります。

 

欧米社会、あるいは多文化環境では、言葉の比重が限りなく重要で、「言外」とか「行間」の比重は重くありません。言ったことが全てです。例えば夫婦の間で「愛しているよ」というフレーズを毎日繰り返すのは、変化していないことを伝えるためで、言わなければ、その愛はどう変化しているのか分からないという話です。

 

これからの世界は、政治のみならず、ビジネスの世界でもコミュニケーション力が問われることは、日本でもよく指摘されている通りです。ですが、最もコミュニケーション力の要求される政治家が、日本では非常に稚拙なしゃべり方しかできません。

 

政治を料亭やホテルのバーで決め、国民の前では、いい加減な官僚の作文を読み上げるだけの日本政治は、もう終りにして欲しいものです。