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 粉飾決算との指摘を否定し続ける東芝は、半導体事業の売却先の決定が秒読み段階にあります。戦後最大規模と言われている日本を代表する一流企業の犯した不正は、日本企業の歴史に大きな汚点を残しそうだ。だが、今回の事件は東芝1企業の問題でないことは誰もが想像していることです。

 かつて山一證券が自主廃業した時の原因究明調査委員会の座長を務めた国廣氏は、筆者の幼少の頃からの友人ですが、大企業の隠蔽体質にあきれたと言っていました。グローバルな交渉の場に数多く立ち合ってきた筆者としては、日本企業が世界的一流企業になるためには3つの課題の解決が必要と考えています。

 まずはリーダーシップで、組織を率いる人間の資質が根本的に問われています。過去の経験値では通用しないグローバル化が急速に進む今、その変化に対応できるスキルがリーダーに求められているという話です。自分自身のアイデンティティも見失っている今の日本の経営者では到底対処できない時代に入っていると言えます。

 次は対消費者や対社会は言うまでもなく、従業員の満足度をどう高められるかが重要課題です。サービス残業や過労死をもたらすブラック企業は、日本の恥と言えます。日本企業で働く欧米人やアジア諸国出身者からは、悲鳴が聞こえています。彼らの満足度は非常に低い。効率性の悪さは何年も前から指摘され、幸福をもたらせない組織は優秀な人材を失い、行き詰まっています。

 そして3つ目が、企業の隠蔽体質です。資本主義社会、民主主義社会の大原則は、透明性の確保に他なりません。後進国ほど透明性はなく、会社にしても透明性が高い会社ほど経営者と社員相互の信頼は高い。東芝にしろ、オリンパスにしろ、あるいは山一證券にしろ、臭いものには蓋をする体質があるということは、透明性が確保されていなかったことを意味します。

 グローバル企業にとって透明性確保は必須条件。なぜなら、日本人だけでなく、目的雇用や文化的背景の異なる人材を抱えることになるからだ。ただでさえ人は見えにくいのが、さらに見えなくなる。

 2番目に挙げた従業員の満足度にしても透明性を高め、情報循環を円滑にしなければ的確な情報を得られず、誤解や摩擦は簡単に起きてしまう。

 それが経営そのものに関わる事項になると、株主、消費者、関連企業、社員への裏切りになる。組織に良識やモラルが働かなくなる。人間は3人集まれば、腐敗が始まると言われています。それを腐らせないようにするためには、透明性の確保は必須条件です。

 日本では隠すことが大人社会の常識のように言われていますが、グローバル企業では不正の発覚は命取りになりかねません。

 隠蔽体質は、人と社会に対する裏切り行為であるだけでなく、嘘をつくことでもある。恥の文化と言われる日本では、なんでも隠せばいいという悪い習慣がある。

 正義よりは人間関係を重視する日本ならではの独特なものでもある。無論、海外にも隠蔽はないことはないが、グローバル企業はそれでは許されない。

 問題なのは、国内での決算収支をよく見せるために、海外にダミー会社を作り、決算をごまかす行為そのものが、グローバル化とは真逆の行為だということに気付いていないことです。

 国外をそのように利用するには、海外は見えにくので隠しやすいからでしょうが、超日本的発想というしかありません。

 それに日本の場合、隠蔽体質は個人というよりは組織で起こるモラル・ハザードの傾向が圧倒的に強い。個人の巨悪ではなく、小さな悪の積み重ねで不正が蔓延してしまう。

 しかし結果的には、それが組織を弱体化させる。保身に走る小心の個人の集まりが組織を破壊するという話です。その意味で透明性を高めることは小さな個の不正を積み重ねてしまうリスクを回避することにも効果がありまる。