http://geographical.co.uk/nature/climate/item/1488-cop21-post-event-perspectives ((Image: Arnaud Bouissou – MEDDE / SG COP21)
アメリカのトランプ大統領がパリ協定から離脱を宣言し、世界が大騒ぎになっています。まるでトランプが地球を滅ぼすと言わんばかりの論調も見受けられます。
不人気のオランド前仏政権が、唯一勝ち取ったといっていい得点が失われ、「パリ協定」の名は霞み、フランスは、さぞ落ち込んでいることでしょう。
しかし、トランプを突き動かしている背後の事情を考えれば、当然とも言える判断だったと私は見ています。
トランプを単純なポピュリストと呼ぶのには反対ですが、ポピュリスト的傾向を持つリーダーであることは確かと言えます。
それは常に敵を作り、敵との戦いを政治使命にするところです。トランプの場合は、オバマ、クリントンに象徴されるリベラル派を敵として徹底抗戦の構えを見せているからです。
ビジネスマンだったトランプ自身は、イデオロギーで動く人間ではないでしょう。
その一方で彼の保守的感性や直感と、周辺に集まる愛国者やネオコン、ユダヤ財閥などが合わさって、一つの方向が生れているように見えます。
パリ協定締結時には、私もパリにいて、小中高の同級生が当時、環境省の事務次官だったこともあり、この会議は身近に感じていました。
協定は結果として、私には世界支配を伺う中国のシナリオ通りだったなという印象でした。地球を救う本気度は見えなかった。
欧州首脳が「アメリカが離脱すれば、中国が主導権を握るリスクが高まる」と警告していましたが、すでに目標そのものが守れない前提にある協定そのものが中国を利している。
協定に署名した195カ国は「自国が決定する貢献案」(INDC)と呼ばれる各国の自主性で温室効果ガス排出削減目標を制定する。守る義務や罰則規定もなく、先進国の分担金だけが明確な協定は、抜け穴だらけです。
環境派は、全体で合意したことに価値があるといいますが、われわれは、それで国連が機能した記憶はありません。
思い起こせば、1980年代後半、ソ連帝国の負の部分が露呈し、共産主義者の旗色が悪くなる中、環境保護の衣をまとった左翼運動家が増えた経緯があります。
耳障りのいい環境保護のもと、国家権力や大企業を批判し、反核、反戦運動などを展開し、リベラル革命を静かに推し進めたわけです。
パリ協定の会場の最前列で、両手を上げて結果に狂喜するケリー前米国務長官やゴア元米副大統領の姿を見ると、まさに1970年代にカウンターカルチャー活動家だった連中の勝利のように見えました。
彼らは冷戦終結で不遇な時期もありましたが、三つ子の魂百までで、目標を達成したようでした。今や彼らは欧米メディアの言葉を借りれば、”環境エリート”になっている。
パリ協定では、トップのアメリカが30億ドルの巨額の分担金、それに続く日本が15億ドルで両国で全体の33%を負担することになっていました。
逆にCO2排出量トップの中国は、日頃は世界第2位の経済大国と胸を張りながら、協定では途上国なのに5%も分担すると威張っています。
中国にとって、環境保護を口にすれば、その旗振り役であった欧州諸国を巻き込むのは簡単なことです。
ところが、例えばドイツでは、安価な中国産のソーラーパネルのために、この数年で何社ものドイツ・メーカーが倒産しています。
しかし、中国なしに経済が立ち行かない欧州は、世界制覇の野望も知らずに中国との関係を最優先し、中国の人権問題などには目をつむっているわけです。
共産党一党独裁を続ける中国は、政権維持のためにイデオロギーの牙は見せないようにしていますが、その代わりに環境政策で世界を操ろうしているのは明白です。
今は誰もが一般的に環境問題はリベラル思想から離れ、全人類の問題として取り組んでいると考えていますが、長年、活動を続けてきた確信犯の活動家が消えるとは思えません。
リベラルなオバマ前政権は、まさに中国のシナリオ通りに動き、欧州は赤子の首をひねるように簡単に利用されていると言えます。
日本は最初から環境優等生気取りですが、今後、世界で最も多額の分担金を支払う日本は、環境問題で世界の指導権を握る意思があるとも思えません。
昨年のアメリカの大統領選挙期間中、激しい対立があったわけですが、興味深い批判が保守派からありました。
「リベラル派は保守派より不寛容」という言葉です。さらにトランプ支持者は「もうわれわれを馬鹿にするのはやめてほしい」とも言っています。
トランプ政権に対して、いいものをいい、悪いものは悪いではなく、全部悪いと報じるリベラル・メディアを見ると、それは当たっているよう見えます。
リベラル派メディアやIT系大企業を敵に回すトランプ政権は、今度はリベラル派が推進するパリ協定から離脱すると宣言し、環境エリートを激怒させています。
無論、宣言した大統領自身が、パリ協定以上に地球環境を守るシナリオを提示できなければ、ただの自己中のリーダーという評価で終わってしまうでしょう。
トランプは、オバマ、クリントンに代表されるリベラル派をひっくり返すことに集中しているように見えますが、それだけでは本質的な問題解決にはならない。
敵対するだけでなく、誰もが納得できる環境政策の新しいヴィジョンを示すことが、唯一、リベラル派をも納得させる材料になると思いますが、それが今のアメリカにあるのかは疑問です。
アメリカのトランプ大統領がパリ協定から離脱を宣言し、世界が大騒ぎになっています。まるでトランプが地球を滅ぼすと言わんばかりの論調も見受けられます。
不人気のオランド前仏政権が、唯一勝ち取ったといっていい得点が失われ、「パリ協定」の名は霞み、フランスは、さぞ落ち込んでいることでしょう。
しかし、トランプを突き動かしている背後の事情を考えれば、当然とも言える判断だったと私は見ています。
トランプを単純なポピュリストと呼ぶのには反対ですが、ポピュリスト的傾向を持つリーダーであることは確かと言えます。
それは常に敵を作り、敵との戦いを政治使命にするところです。トランプの場合は、オバマ、クリントンに象徴されるリベラル派を敵として徹底抗戦の構えを見せているからです。
ビジネスマンだったトランプ自身は、イデオロギーで動く人間ではないでしょう。
その一方で彼の保守的感性や直感と、周辺に集まる愛国者やネオコン、ユダヤ財閥などが合わさって、一つの方向が生れているように見えます。
パリ協定締結時には、私もパリにいて、小中高の同級生が当時、環境省の事務次官だったこともあり、この会議は身近に感じていました。
協定は結果として、私には世界支配を伺う中国のシナリオ通りだったなという印象でした。地球を救う本気度は見えなかった。
欧州首脳が「アメリカが離脱すれば、中国が主導権を握るリスクが高まる」と警告していましたが、すでに目標そのものが守れない前提にある協定そのものが中国を利している。
協定に署名した195カ国は「自国が決定する貢献案」(INDC)と呼ばれる各国の自主性で温室効果ガス排出削減目標を制定する。守る義務や罰則規定もなく、先進国の分担金だけが明確な協定は、抜け穴だらけです。
環境派は、全体で合意したことに価値があるといいますが、われわれは、それで国連が機能した記憶はありません。
思い起こせば、1980年代後半、ソ連帝国の負の部分が露呈し、共産主義者の旗色が悪くなる中、環境保護の衣をまとった左翼運動家が増えた経緯があります。
耳障りのいい環境保護のもと、国家権力や大企業を批判し、反核、反戦運動などを展開し、リベラル革命を静かに推し進めたわけです。
パリ協定の会場の最前列で、両手を上げて結果に狂喜するケリー前米国務長官やゴア元米副大統領の姿を見ると、まさに1970年代にカウンターカルチャー活動家だった連中の勝利のように見えました。
彼らは冷戦終結で不遇な時期もありましたが、三つ子の魂百までで、目標を達成したようでした。今や彼らは欧米メディアの言葉を借りれば、”環境エリート”になっている。
パリ協定では、トップのアメリカが30億ドルの巨額の分担金、それに続く日本が15億ドルで両国で全体の33%を負担することになっていました。
逆にCO2排出量トップの中国は、日頃は世界第2位の経済大国と胸を張りながら、協定では途上国なのに5%も分担すると威張っています。
中国にとって、環境保護を口にすれば、その旗振り役であった欧州諸国を巻き込むのは簡単なことです。
ところが、例えばドイツでは、安価な中国産のソーラーパネルのために、この数年で何社ものドイツ・メーカーが倒産しています。
しかし、中国なしに経済が立ち行かない欧州は、世界制覇の野望も知らずに中国との関係を最優先し、中国の人権問題などには目をつむっているわけです。
共産党一党独裁を続ける中国は、政権維持のためにイデオロギーの牙は見せないようにしていますが、その代わりに環境政策で世界を操ろうしているのは明白です。
今は誰もが一般的に環境問題はリベラル思想から離れ、全人類の問題として取り組んでいると考えていますが、長年、活動を続けてきた確信犯の活動家が消えるとは思えません。
リベラルなオバマ前政権は、まさに中国のシナリオ通りに動き、欧州は赤子の首をひねるように簡単に利用されていると言えます。
日本は最初から環境優等生気取りですが、今後、世界で最も多額の分担金を支払う日本は、環境問題で世界の指導権を握る意思があるとも思えません。
昨年のアメリカの大統領選挙期間中、激しい対立があったわけですが、興味深い批判が保守派からありました。
「リベラル派は保守派より不寛容」という言葉です。さらにトランプ支持者は「もうわれわれを馬鹿にするのはやめてほしい」とも言っています。
トランプ政権に対して、いいものをいい、悪いものは悪いではなく、全部悪いと報じるリベラル・メディアを見ると、それは当たっているよう見えます。
リベラル派メディアやIT系大企業を敵に回すトランプ政権は、今度はリベラル派が推進するパリ協定から離脱すると宣言し、環境エリートを激怒させています。
無論、宣言した大統領自身が、パリ協定以上に地球環境を守るシナリオを提示できなければ、ただの自己中のリーダーという評価で終わってしまうでしょう。
トランプは、オバマ、クリントンに代表されるリベラル派をひっくり返すことに集中しているように見えますが、それだけでは本質的な問題解決にはならない。
敵対するだけでなく、誰もが納得できる環境政策の新しいヴィジョンを示すことが、唯一、リベラル派をも納得させる材料になると思いますが、それが今のアメリカにあるのかは疑問です。
