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  米韓首脳会談を終えて帰国時の文在寅大統領


 初の米韓首脳会談が6月30日にワシントンで行われた後の日米韓のメディアの報道の仕方は非常に興味深かった。特に韓国メディアが報じたトランプ米大統領の歓迎ぶりや、北朝鮮に関する共通認識が共有できたなど文在寅大統領との信頼関係構築がスムーズにできたという報道は、滑稽なほど幼稚にも見えた。

 米ニューズウィーク誌は、首脳会談直前に米政府が北朝鮮を支援していると目される中国企業と個人に制裁を課す決定を下し、トランプ大統領は文大統領に冷水を浴びせたと書いています。つまり、トランプは、対話重視の文氏に対して対北朝鮮政策で断固とした姿勢は取ることを確認した形になったわけです。

 出鼻をくじかれた文大統領は、さらにトランプに米韓の不公正な貿易収支問題を取り上げられ、是正を迫られ、在韓米軍に対する負担増額を迫りました。つまり、文氏は、誰に主導権があるのかの踏み絵を踏まされたということです。

 さらに共同記者会見で、トランプがアメリカは「対北朝鮮の忍耐政策は終わった」という認識を示したのに対して、無言の反応を示した文氏は、その後の集会のスピーチで対話路線を強調し、あたかも自らの対北穏健外交路線がトランプに承認されたかのように発言したことは嘘に近いものです。

 にもかかわらず、韓国国営TV、KBSは、これまでトランプが会った安倍首相、メイ英首相、マクロン英大統領など世界の首脳よりも、情のこもった握手を両首脳が交わしたと報じ、中身よりは雰囲気を報道することで、文大統領万歳報道に終始しました。

 しかし、結果は、中露首脳会談が行われた7月4日に北朝鮮がICBM級の長距離弾道ミサイルの発射事件を行い、文大統領の対話路線に「ノー」が突きつけられた形です。北朝鮮の労働新聞は「韓国の南北対話提案は馬鹿げている」とまで書いていることが報じられています。

 冷静に見れば、トランプ大統領に冷や水を浴びせられ、誰が主人かと迫られ、金正恩は対話を拒否しただけでなく、「相手が何を考えているかわかっていない」とまで言われ、対北軟化路線を掲げて当選した文氏は、自らの公約が実現不可能に陥っているようにしか見えません。

 文大統領は4日、「韓米が定めたレッドラインを北朝鮮が超えた場合、われわれはどう対応するかわからない」と述べていますが、その制裁シナリオを文氏が持っていないことを物語っています。今や当事国である韓国は、現実対応不能のリーダーによる迷走の中、北朝鮮の恐喝に怯える日々を送っているようにしか見えません。