英国の鉄道ビジネスへの参入で、それまでドメスティックだった日立製作所の鉄道部門は一挙にグローバルビジネスへの道に踏み出しました。今後の課題は一つはグローバルリスクマネジメントへの取り組みだと私は見ています。今のところ、日立の英国での成功と東芝のアメリカでの原発事業の挫折は、2つの大企業の明暗を分けていますが、グローバルビジネスの持つリスクへの取り組みは重要です。
特に英国のEU離脱を考えると、英国が人、物、サービスの移動を保障したEUから外れることは、英国の製造拠点に確実に影響を与えることでしょう。離脱交渉が始まる直前の先月、ハモンド英財務相は「雇用を守ることと経済成長や繁栄の持続を優先すべきというのがわたしの明確な考え方で、英国民の多くもそうだと思う」と強調しましたが、容易な交渉でないことも認めています。
英国は1979年に発足したサッチャー政権以降、英国への外資系企業参入の規制を大幅に緩和することで、安定した経済発展を遂げてきました。外資系企業にとっては、欧州の金融の中心で英語圏のメリットもあり、欧州事業の統括拠点、輸出拠点、研究開発拠点として非常に多くの外資系企業がビジネスを展開しています。
それは今日に到るまで、政権が保守党から労働党、労働党から保守党への移行しても変わることのない政策でした。政権移行は格差拡大などの国民の不満が大きいわけですが、ここで注目されるのが、平等意識に対する仏独などの大陸欧州と英国の考え方の違いです。大陸欧州は富の再分配など社会主義的政策で平等を確保してきたのに対して、英国は「公平な機会」の提供で平等を確保してます。
それはともかく、昨年6月のEU離脱を問う国民投票で、日系自動車メーカーの生産拠点サンダーランドで、離脱支持が残留支持を上回りました。離脱すれば生産拠点が他のEU加盟国に移り、職がなくなるというリスクがあっても離脱を支持したわけです。国民投票では労働者階級の多くの人々が離脱を支持したと言われていますが、他のEU加盟国からの労働者の大量流入への不満もあったのは事実です。
グローバルリスクマネジメントは、ビジネスのトップに立つ人間に必須なだけでなく、そのビジネスに関わる全ての人間に知識とスキルが要求されます。たとえば文化的背景の異なる人々の協業はダイバーシティのシナジー効果を産み出すだけでなく、誤解が産み出す衝突や決められないマネジメントに陥るリスクを抱えています。
互いに理解しているつもりでいても、実は根本的なところで大きな誤解があったりするのが、グローバルビジネスの現場です。さらに今回のEU離脱という想定外のカントリーリスクも起きます。為替リスクやテロ、労働争議、流通コスト、関税障壁のリスクもあります。
そこで考えられることは、リスクの分散などの判断を下すためにグローバルビジネスに通じるスピード感のある意思決定プロセスを整備し、マネジメントクラスのナショナルスタッフを活用することです。実は私の長年の取材やコンサルタントの経験から日系企業は、マネジメントに大きな課題を抱えています。ハイコンテクストの日本人は、多文化環境でのビジネスで、人の管理が十分にできているとは言えません。
日立は今後、英国で培った車両供給と鉄道管理運営ビジネスのノウハウを活用して、同様なビジネスモデルで他の欧州市場に乗り出すことや、アメリカ大陸、アジアなどでの展開も視野に入れていることでしょう。その意味で英国での今の試練は貴重な経験であり、グローバル企業への脱皮ができるかどうかの試金石になりそうです。
特に英国のEU離脱を考えると、英国が人、物、サービスの移動を保障したEUから外れることは、英国の製造拠点に確実に影響を与えることでしょう。離脱交渉が始まる直前の先月、ハモンド英財務相は「雇用を守ることと経済成長や繁栄の持続を優先すべきというのがわたしの明確な考え方で、英国民の多くもそうだと思う」と強調しましたが、容易な交渉でないことも認めています。
英国は1979年に発足したサッチャー政権以降、英国への外資系企業参入の規制を大幅に緩和することで、安定した経済発展を遂げてきました。外資系企業にとっては、欧州の金融の中心で英語圏のメリットもあり、欧州事業の統括拠点、輸出拠点、研究開発拠点として非常に多くの外資系企業がビジネスを展開しています。
それは今日に到るまで、政権が保守党から労働党、労働党から保守党への移行しても変わることのない政策でした。政権移行は格差拡大などの国民の不満が大きいわけですが、ここで注目されるのが、平等意識に対する仏独などの大陸欧州と英国の考え方の違いです。大陸欧州は富の再分配など社会主義的政策で平等を確保してきたのに対して、英国は「公平な機会」の提供で平等を確保してます。
それはともかく、昨年6月のEU離脱を問う国民投票で、日系自動車メーカーの生産拠点サンダーランドで、離脱支持が残留支持を上回りました。離脱すれば生産拠点が他のEU加盟国に移り、職がなくなるというリスクがあっても離脱を支持したわけです。国民投票では労働者階級の多くの人々が離脱を支持したと言われていますが、他のEU加盟国からの労働者の大量流入への不満もあったのは事実です。
グローバルリスクマネジメントは、ビジネスのトップに立つ人間に必須なだけでなく、そのビジネスに関わる全ての人間に知識とスキルが要求されます。たとえば文化的背景の異なる人々の協業はダイバーシティのシナジー効果を産み出すだけでなく、誤解が産み出す衝突や決められないマネジメントに陥るリスクを抱えています。
互いに理解しているつもりでいても、実は根本的なところで大きな誤解があったりするのが、グローバルビジネスの現場です。さらに今回のEU離脱という想定外のカントリーリスクも起きます。為替リスクやテロ、労働争議、流通コスト、関税障壁のリスクもあります。
そこで考えられることは、リスクの分散などの判断を下すためにグローバルビジネスに通じるスピード感のある意思決定プロセスを整備し、マネジメントクラスのナショナルスタッフを活用することです。実は私の長年の取材やコンサルタントの経験から日系企業は、マネジメントに大きな課題を抱えています。ハイコンテクストの日本人は、多文化環境でのビジネスで、人の管理が十分にできているとは言えません。
日立は今後、英国で培った車両供給と鉄道管理運営ビジネスのノウハウを活用して、同様なビジネスモデルで他の欧州市場に乗り出すことや、アメリカ大陸、アジアなどでの展開も視野に入れていることでしょう。その意味で英国での今の試練は貴重な経験であり、グローバル企業への脱皮ができるかどうかの試金石になりそうです。