Northern_150275_at_Buxton,_April_2017

 JR東日本は三井物産とタッグを組んで、今年12月より英国中西部の鉄道運営へ乗り出すことが明らかになりました。これはオランダ鉄道(NS)系列アベリオ・グループの英国子会社(アベリオUK)と英国中西部で路線網を展開するウエストミッドランズ鉄道のフランチャイズ(営業権)を落札したことでもたらされたものです。

 タイやインドで車両提供や保守、技術支援を行うなど海外の鉄道事業展開に積極的に取り組むJR東日本ですが、海外で鉄道運営を手掛けるのは初めて。それも先進国、特に鉄道発祥の地、英国で事業展開に挑戦する意義は大きいと言えそうです。

 英国では、老朽化した車両の大幅入れ換えで日立製作所が車両製造、供給をすでに展開し、高い評価を得ています。今回は、たとえば、ストライキや遅延が頻発するロンドン郊外路線などの改善に運行実績で高い実績を持つJR東日本が評価され、受注を実現した形です。

 今回はすでに英国での旅客鉄道運営実績を持つ井物産と共同して行うため、JR東日本にとっては、グローバルビジネスを大きく飛躍させる一歩を踏み出すことになります。

 そこで課題となるのは、グローバル人材がどれほどJR東日本で育っているのかということだと思います。日立は基本的に製造業で豊富な実績がある一方、JR東日本は、その日立に車両制作を発注する側で、鉄道運営を社業としている。

 両社とも英国のナショナルスタッフが主役で運営されるわけですが、鉄道運営の方が実際に運行する鉄道を管理するという意味で、マネジメントスキルが問われる業種でもあります。そこで想像できることは、日本の高い運行ノウハウを移植し、継続的に運営するためには現地のナショナルスタッフへの指導と育成が欠かせません。

 鉄道運営に関わる人の幅は広く、日本のように上から下まで労働者の質が非常に高いとは言えない英国では、優れたシステムは導入できても、それを動かす人間の管理は容易でないことが想像できます。

 特にJRは典型的な日本企業でグローバルに開かれた企業ではないため、グローバルに仕事ができる人材の層は厚いとは言えません。それに物づくりとは違った難しさがある点も課題と言えそうです。

 ただ、英国は日本よりはるかに外国企業に開かれており、特に日本への評価と信頼度は高いので、今回のプロジェクトで鉄道が遅延なく正確に運行されるようになることへの英国市民の期待感は高いと言えます。

 製品や技術で高い評価を得ている一方、マネジメントでは疑問符がつけられている日本企業にとっては、新たな挑戦といえるでしょう。