フランスでバター不足が深刻化しています。大量のバターを使うブランジェリーやパティスリーでバター不足の懸念が拡がるだけでなく、一般消費者にとってもスーパーの棚からバターが消える事態が起きています。
理由の一つは近年、「バターは身体に悪い」という定着した固定観念を覆す研究が欧米の食品と健康を調査する研究所から発表され、バターの消費が増えているからだと言われています。逆に大量に出回っている安価で健康にいいとされたマーガリンの消費が減っているとも言われています。
さらに欧州連合(EU)は2015年に生乳の生産上限を撤廃し、価格が急落したため、昨年は生産者が生産を削減したことも影響しています。この問題はバターの需要の伸びとは相まって生乳価格が伸びないため、生産業者から不満の声があがっていることをフランス・メディアが伝えています。
安価で人工的に作られた植物性油を使用したマーガリンについては、数年前からマーガリンに含まれるトランス脂肪酸の摂取量が増えると、血液中に悪玉コレステロールが増え、逆に善玉コレステロールが減少することが指摘され、動脈硬化、心臓病、高血圧に繋がると指摘されるようになりました。
一方のバターは長年、その脂肪やカロリーの高さが健康被害に繋がるとの指摘を受け、劣勢に回っていました。フランスではオリーブオイルを使う南フランスに住む人の平均寿命が最も長く、バターの摂取量が多い西部ブルターニュ地方の人が早死にだと言われ、バターの弊害を指摘する声がありました。
ところが、どうやらその噂は、ブルターニュ地方のアルコール摂取量の多さとも関係があるようで、簡単にバターのせいだけとも言えないようです。
バターには酪酸と呼ばれている脂肪酸が含まれ、酪酸は数ある脂肪酸の中でもとりわけ脂肪の分解を促進する作用が強く、脂肪の代謝を活発にする効果があり、体内に蓄積されてしまっている不要な脂肪分なども分解し腸内環境を整えてくれるという指摘が注目を集めています。
つまり、バターの摂取で脂肪が増えるという単純な考えは先入観でしかなく、医学的根拠がないという話です。さらにマーガリンは酸化しやすく、バターは酸化しにくいという指摘もあります。
無論、健康ブームで消費者が神経質になっている現象は世界中同じで、今回のことも過剰反応するのもどうかと思います。フランスも例外ではなく、病的と思われる健康オタクは多くいます。
実はバターの価格は、生乳価格の下落と相まって過去1年間でキロ当たりの価格が、それまでの2倍となる6ユーロ(約800円)を超える記録的水準に達しています。当然、材料の4分の1をバターが占めるクロワッサンやケーキ、ビスケット類のメーカーに価格高騰は重くのしかかっています。