Angela_Merkel

 毎年、世界に影響力のある女性のランキングを発表している米フォーブス紙は、今年、最も影響力のある女性にアンゲラ・メルケル独首相を選びました。彼女は7年連続1位という快挙でもあり、その安定感は今秋の総選挙もなんとか乗り越え、ドイツ国内だけでなく国際社会からの信頼も得ていると言えます。

 10月31日、ドイツは神学者マルティン・ルターが宗教改革を主導してから500年となり、その記念式典が、ゆかりの地、独東部ウィッテンベルクで行われ、父親が牧師だったメルケル首相が演説し「われわれは寛容であることが欧州の精神だと学んだ」と述べ、信教の自由や多様性を認める重要性を改めて強調しました。

 1昨年来、シリアやイラクなどの紛争地域を逃れてきた大量の難民・移民を欧州連合(EU)加盟国として最も受け入れることを決断したメルケル首相は、その後の難民たちが引き起こした集団による性的暴行事件や治安悪化で、一挙に国民の反発を買うようになり、厳しい批判に晒されました。

 しかし、その試練も超え、支持率を回復し、今秋の総選挙では圧勝とはいきませんでしたが、首相に座を確保し、故コール独首相に並ぶ長期政権になる模様です。2005年以降首相を務めるメルケル氏は、今回の選挙で反移民で躍進した極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」の勢いをどこまで止められるかが課題です。

 その一方で、EU内での失業率の低さと国内経済の成長を背景に、ブレグジットに伴うEU改革でも指導的に立場にあり、強いリーダーシップが期待されています。フォーブス誌は世界銀行のデータを引用し、2016年のドイツ国内総生産(GDP)は世界第4位で3兆5000億ドル(約400兆円)に達し、女性指導者が率いる国としては世界1位の規模としています。

 一方、2位に選ばれたテリーザ・メイ英首相は、ブレグジットの健闘中ですが、英国内で高いに人気があるとは言えません。ただ、ブレグジットの大仕事に取り組む女性という意味で選ばれたと言えます。昨年2位だったヒラリー・クリントン米前国務長官は大統領選敗北で63位にまで落ち、米国が一度も女性大統領を輩出しない先進国と指摘しています。

 これは日本も同じことで、女性首相を輩出していないわけで今後の課題と言えるでしょう。男性中心社会から最も抜け出せない先進国といわれる日本ですが、度重なる企業の不祥事と汚職などの政治腐敗に男性中心社会が影を落としています。3位は台湾の蔡英文総統でした。

 昔と違い、女性リーダーであればいいということはなく、リーダーとしての資質や能力も厳しく問われる時代です。ただ、他の先進国に比べ、公正な機会を女性に十分与えていない日本は、男性の保身や弱さも垣間見えます。

 さらに今秋は米ハリウッドの大物映画プロデューサー、ハーベイ・ワインスタイン氏が約30年間にわたり、セクハラ行為を繰り返していたことが発覚し、今月は英国の男性政治家によるセクハラ疑惑が発覚するなど、女性を性的に抑え込む男性リーダーの存在が取り沙汰されています。

 男性が性的優位性を誇示するという文明社会ではあってはならないことが、未だに繰り返されていることは、女性にとってはガラスの天井をさらに厚くしていると言えるでしょう。多様性が豊かさ、ライフクオリティーを高めることに最も適した女性の重用は今後、益々重要さを増すと思われます。