スイスのビジネススクールIMDの世界競争力センター(IMD World Competitiveness Centre)が公表したWorld Talent Ranking 2017 によれば、世界の高度技能者にとって働く環境としての日本の魅力は、アジア11カ国中、最下位でした。
IMDは毎年、国際競走に関するさまざまな調査を行っており、国ごとの国際競争力も発表しています。世界63カ国を対象にした今回の報告者によればビジネスにおける有能な人材が最も潤沢なのはスイスで、2005年の統計開始以来、2位に甘んじた2006年を除いて、首位を守っています。
11月21日付のBloombergは、なんと「日本はアジアで最下位、高度外国人材への魅力欠く−IMD」と題する記事を掲載しています。日本については言葉の障壁と厳格なビジネス慣行があることが問題として指摘されています。日本は魅力の項目で51位と下位でした。
個人的な経験で言えば、長年、フランスのビジネススクールで教鞭を執ってきた経験から日本が世界の有能な人材にとって働きたくない国というのは、今に始まった話でもありません。昨年は電通の若い女子社員の過労自殺がありました。長時間労働、過重労働に魅力を感じる人間は、世界中探しても、そんなに多くはいません。
簡単に言えば、自分の能力を適切に評価し、それなりのポジションと報酬が得られ、キャリアパスが明確になっており、自分のスキルを伸ばしてくれることが有能な人材には必要不可欠なことです。年功序列や不明確な評価基準とキャリアパス、会社の一方的人事慣習、サービス残業などはイメージを悪くするだけです。
IMDの調査では、魅力項目でアジアでは1位がシンガポール、2位は香港。調査対象の世界63カ国のうちでは、日本は51位。無論、この調査は投資と育成、魅力、準備性の3つの領域に分かれ、それぞれ評価項目があり、日本の51位は魅力の項目です。全体では31位でした。
たとえば、投資と育成の領域で社員教育は5位と高く、魅力の領域でもマネジメントの報酬では7位と高い一方、女性の労働力45位は頂けない数字です。これは中国を初め、タイなど東南アジア諸国で女性の労働力の割合が高いのに比べ、日本が極端に低いからです。
今月26日、経済産業省の旗振りで、人工知能を利用した人材配置を導入する集まりが東京であり、人材活用の効率化が諮られていますが、ビジネス慣行そのものが簡単に変わるとは思えません。それに今後益々重要さが増すビッグデータや人工知能、IoTといったテクノロジーを扱う人材が、日本で2020年には4万8千人不足するという予想もあります。
人材不足解消に海外の有能な人材を登用するという流れはありますが、有能な人材が日本に魅力を感じなければ、彼らを惹きつける事はできません。中には、日本国内で人材育成に投資すれば済む事と考える専門家もいますが、その考えではグローバルビジネスへの対応は壁が厚いと言えます。
実際、同じIMDが今年5月に発表した「IMD世界競争力ランキング2017」では、1位が香港、2位がスイス、3位シンガポール、4位アメリカで日本は26位でした。日本企業は、このような数字に敏感ではなく、世界的に見て収益がある程度あれば安堵する傾向もありますが、それは過去の蓄積と日本人の驚異的勤勉さと能力に支えられてのことです。