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 トランプ米大統領は29日、アマゾン・ドット・コムに請求する料金を郵政公社(USPS)は引き上げるべきだと指摘し、これに反応し、アメリカ株式市場でアマゾン株は下落したことが、ブルームバーグなどで伝えられました。

 さらに「年間何十億ドルもの損失を出しているUSPSが、なぜアマゾンなどの小包配送に対してわずかな料金しか請求せず、アマゾンをどんどん太らせ、逆にUSPSはより愚かで貧しくなっているのか?」といつものようにツイッターで問いかけました。この問題は日本でも宅配業者を圧迫している批判が今年表面化しました。

 一方、トランプ政権が打ち出す税制改革法の中に含まれる他国の低税率を利用した、いわゆるタックスヘブンへの利益移転に歯止めを掛ける税源浸食・租税回避防止税(BEAT)条項により、アメリカで大規模な事業を展開する外国銀行にも打撃が及ぶ可能性が指摘されています。

 BEATは、アメリカ企業が海外の関連企業に支払った額を税額算出の際に組み入れることを義務付けるもので、グローバルに事業を展開する大手銀行などは課税額が増大する可能性があります。

 そのため、今回の税制改革で注目を集める法人税の引き下げとは別に、巨大IT系企業やグローバル金融機関はBEATによる課税負担増に直面することが指摘されています。

 これらの動きは、トランプ大統領が昨年の大統領選挙中から発言を繰り返していた巨大IT系企業やグローバル金融機関への批判と合致しています。トランプ大統領はこれまでもアマゾンに対して、まじめに納税する小売業者にダメージを与えていると批判を繰り返してきました。

 フェイスブックやグーグルなどの巨大IT系企業が、リベラルなクリントン候補を昨年支持した背景を考えると、トランプ大統領がアマゾンなどをターゲットにしている姿勢は、当然の流れと言えるでしょう。

 トランプ大統領は、急激に進んだグローバル化で取り残された人々によって選ばれたわけですから、ITや金融の巨大グローバル企業が標的になっていることも頷けます。同時にビジネスマンのトランプ氏は、大企業=悪という左翼的思想で動いているわけでもありません。

 むしろ、IT企業などから巨額の寄付金を受け取ってきたオバマ、クリントンといったリベラル系のリーダーの方が矛盾に満ちていたと言えます。その矛盾に気づいた若者たちが、社会主義者のサンダース候補支持に回ったことは記憶に新しいところです。

 いずれにしても、ツイッターで大統領が企業を名指しで批判する状況は、日本では考えられないことです。特に大企業と蜜月関係にある自民党政権ではありえないことです。しかし、アメリカでは、IT革命で「世界を変える」と豪語するリベラル支持のグローバル企業は、2018年もトランプ政権の標的になり続けることは確かと言えそうです。

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