米英を中心にセクハラ被害者を支援する運動「Time's Up(もう終わりにしよう)」や、ソーシャルメディアでハッシュタグ「#MeToo(私も)」を使って被害を告発する動きが高まる中、フランスの大御所女優らが、この運動に疑問を呈したことはセクハラ議論に深みを与えているように見えます。
カトリーヌ ブリジッド

 映画「シェルブールの雨傘」などで知られる世界で最も名前が知られる今も現役のフランス人女優、カトリーヌ・ドヌーヴ(75)は、女性作家などフランスの女性100人とともに今月9日、仏紙ルモンドに連名でコラムを寄稿し、「#Metoo」運動は行き過ぎと批判しました。

 その後、国内外のセクハラ被害者や運動推進派、さらにはフェミニストらから強く批判されたため、性暴力が許されないという認識は明確に持っていると述べ、セクハラ被害者へ謝罪したものの、見解自体は訂正しませんでした。

 一方、動物愛護運動家で極右支持者としても知られる、1950年代から70年代に活躍し、早期に女優を引退しやブリジッド・バルドー(83)は今月17日、パリ・マッチ誌にハリウッド・スターのセクハラ被害告白を「売名行為」と批判しました。彼女はドヌーヴより過激なことで知られるので、発言の訂正は今のところしていません。

 2人のフランス女優の発言は「男が魅力を感じる女性を口説こうとすることは、女性も歓迎しているはず」「セクハラ批判は、人生を豊かにしている全ての色恋まで否定することに繋がる」「役を得るためにプロデューサーをその気にさせて起きながら、注目を集めるために態度を翻し告発する偽善」というものです。

 これは今回のハリウッドのセクハラ告発騒動に最も葛藤している男性らを、老練な世紀のスター女優がサポートしたような話です。確かに今回の騒動は米英のハリウッドスターが主導しており、フランスではトーンが異なっています。

 それでも一致点はあります。それはドヌーヴが言っているように性暴力は絶対に許されない犯罪という点です。しかし、最終的に暴力に至らない行為をどこまでセクハラとするかは議論が必要です。

 たとえば、黒いドレスで女優たちが参加した今年のゴールデングローブ賞を見て、「セクハラに抗議しながら、なぜ、彼らは胸を出し、身体の線を強調する黒いドレスを着るのか」と疑問を呈するフランス人の友人もいます。

 その友人は「女性は本能的に着飾り、美しく見せたいし、その核心がセクシーであることだからそうするのだろうけど、それがとんでもない結果を招くことは考えていない」と指摘します。昔、フェミニストやウーマンリブの活動家が、下着を外して自由を訴えたのを思い出します。

 フランスは、夏のビーチで女性がトップレスなのが一般的でしたが、最近は禁止するビーチが増えている。理由の一つは男性たちが迷惑だと文句を言っているからです。それに夏の性犯罪を減らす目的もあります。

 今後、セクハラ問題は過熱が予想されますが、議論を深めていく必要があります。それにこの問題は宗教とも深く関係しており、今や大勢力であるイスラム圏の考えや文化の異なる東洋でも慎重な議論が必要です。

 個人的には、男女に備わった動物的本能は、人間が最も重視すべき愛情でコントロールされるべきもので、その愛情は他者をけっして傷つけないもの。そこから逸脱する行為は野蛮な行為と断罪されるべきだと考えています。無論、そのコントロールこそが最も難しいのが現実ですが。

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