世界で今、最も危険な国とされる北朝鮮に対して、韓国の文在寅大統領は、特使を送り込んで新たな外交を模索しようとしています。韓国の高官ら全員を夕食に招いた北朝鮮で金正恩朝鮮労働党委員長は、平昌冬季五輪の南北融和ムードの演出の中、南北首脳会談という次の一手を打ってきました。
文在寅大統領としては、戦争回避のための米朝対話の地ならしが目的と見られ、そのためにけっして表には出ない北朝鮮が喜ぶ様々なお土産を携えての訪朝だった可能があると思われます。平昌五輪への北朝鮮選手団の参加以来、一貫して北朝鮮ペースで進んできた南北間の外交は、今も継続しているのは確かと言えます。
アメリカのトランプ大統領は北朝鮮の非核化という外交方針を変えていないものの、実際の軍事衝突を避ける意味で、対話への意欲も見せています。ただ、複数の米メディアが指摘するように、トランプ政権が未だに駐韓アメリカ大使と、アジア担当の国務次官補も正式決定していない現状で、対北外交で次のステージに行けるのか、疑問符が残ります。
さらには、米韓軍事演習に関連して、アメリカ太平洋軍の司令官が近く退任し、アジアでの経験が薄いとされる人物がが後任に就くとされており、不安要素は少なくありません。チェスの最中に動ける駒が確定せず、急に駒が未経験の選手に交代するような状況で真剣勝負の外交ができるのかという疑問も拡がっています。
日本は一貫して北朝鮮の非核化の約束は、不可逆的であることが重要と主張していますが、韓国でさえも従軍慰安婦問題で両国が合意した不可逆的外交取り決めを無視している状況で、何度も国際的約束を反故にしてきた北朝鮮にどうやって約束を履行させるのかは極めて疑問です。
個人的には、十分な体制がアメリカにないにせよ、北朝鮮のこれまでと変わらない、まったく信用できでない言動にトランプ大統領が易々と乗る可能性は高くはないと見ています。無論、一つの不明な点は、過去にない規模の制裁を国連及びアメリカから課されている北朝鮮が経済的に追い詰められているかどうかということです。トランプ氏がその見極めを間違う可能性もあります。
とはいえ、金正恩委員長が非核化に合意する姿勢を見せたとしても、不可逆性をどう担保できるのでしょうか。それは過去の行状からすれば、ありえないことです。
南北統一をチラつかせながら、韓国を従わせる動きに出ている北朝鮮ですが、指導力のない文在寅大統領は、今後も北のペースに従うしかないでしょう。一方は独裁者で自分でなんでも決まられますが、文在寅氏は、すべてを一人で決めることはできません。そんなことをすれば、朴前大統領の二の舞になってしまい、北に対して弱い立場であることに変わりはありません。
北のありえない約束に乗って、その間に核兵器の完成と実践配備を終了するというシナリオは、何一つ変わらないでしょう。トランプ大統領の出方が注目されます。
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