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 米中貿易戦争の懸念が拡がる中、米ウォールストリートジャーナルは新たな関税品目として「米中とも約500億ドル相当の品目を標的としてリストアップした。これは米国の対中輸出額の約38%に匹敵する。中国の輸出規模ははるかに大きいので、対象となるのは輸出の10%程度。関税が発動されたとしても、米中の経済規模はそれぞれ19兆ドルと12兆ドルに達するため、影響は比較的小さい」と指摘しています。
 さらに「両国が発動をちらつかせた措置は、大方のアナリストが「全面的な貿易戦争」と呼ぶほど重大なものではないかもしれないが、米産業界の大半を巻き込んだロビー活動に火をつけてしまった。そのうえ、投資家は報復関税で標的にされた製品を扱う企業の株式を手放したため、株価の急落を招いた」とも書いています。

 発端は、トランプ米大統領が、米中の貿易不均衡に強い不満を示したことに始まり、その具体的措置に的外れがあるにせよ、中国の不公正な貿易手法に一石を投じようとしているのは確かです。欧州企業などはアメリカほど強くないので、中国に企業進出する企業に対して、中国当局に強制的な技術開示を求められても、なす術もなく従っているのが現状です。

 フランスはサルコジ政権時代に中国を正式訪問したおり、欧州航空大手エアバスが旅客機160機を中国から受注、その契約額は総額200億ユーロ(約2兆7000億円)を超えましたが、条件には最終製造過程を中国で行うことや中国人の高度技術者雇用が含まれ、事実上の強制技術開示でした。

 最近では、今年2月下旬に 米アップルのクラウドサービス、iCloudで、中国のユーザーのアカウントと暗号化キーが中国企業へ移管され、人権団体などから非難されています。昨年6月に中国で施行されたインターネット安全法により、クラウドサービスを提供する企業は全てのデータを中国国内に保管し、当局の要請に応じて提出するよう義務付けられたためです。 

 米アマゾン、マイクロソフトも同様な措置をとっていますが、新法により、米IT企業は中国国内での事業継続の選択を迫られた形です。これにより、中国当局は、欲しいユーザー情報を国際的な法手続きなしで入手できるようになったわけです。サイバー空間の政府管理に熱心な中国、ロシアでは、企業の顧客のプライバシーとセキュリティーを守ることが困難になっています。

 長年、世界の工場として機能してきた中国は、都合のいい法整備を行い、最終的には中国製ではなく、中国メーカーを育てることをめざしています。そのための強制情報開示ですが、巨大市場となった 立場を利用し、さらなる技術獲得をめざしているのも事実です。

 問題は、実は経済でも技術でもなく、その背後にある政治的意図です。アメリカが主張する公正さは、中国では意味をなしていません。その中国は強烈な大国志向と覇権主義によって世界支配をめざしているわけで、そんな国に技術力、経済力を持たせていいのかという視点です。

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