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 日本のビジネスマンがアメリカで学ぶ一つが実用主義です。それは結果にコミットするとか利益にコミットするということで、日頃の煩雑な業務に追われるプロセス重視の日本人が、つい結果にコミットする意識が薄れてしまうことを、アメリカで気付かされたというのは話をよく聞きます。

 結果重視の根底にある実利主義、実用主義はアメリカの経済発展に大いに寄与してきたわけですが、日本人にはその背後にあるキリスト教の精神文化に気付くことは、あまりありません。実用主義は、英国の経験主義にルーツを持ち、科学の時代に突入した100年前、キリスト教を進化させる形で登場し、今の政治やビジネスの世界に定着しています。

 キリスト教的ルーツから、アメリカは神が理想世界を築くために準備した地であるという普遍主義や、人がそれにのっとって行動する信念と信仰を重ね合わせることが実用主義には含まれています。

 たとえば、ビル・ゲイツがWindowsというOSを考えつき、そこから巨額の利益を得たわけことは、神がその知恵を彼に与え、人類は飛躍的仕事の効率化に貢献するよう導いたとも説明できるわけです。

 自由と平等、それを可能にする公正(フェアー)というアメリカ人の普遍的価値観への信念は変わることがありません。そのため、アメリカ人は確固たる信念を持って行動する人が尊敬され、理想的リーダー像は旧約聖書に出てくるモーゼのように彼に従うイスラエル民族が不平不満を言おうと、砂漠で幾多の困難に遭遇しても信念を変えなかったような人物を尊敬しているわけです。

 その一方で、その信念は具体的な目標達成に対しては、現実の状況変化の前に哲学的な一貫性は重視されず、具体的方針はその時の状況に応じて変わることも当然と考えているのがアメリカ人です。これはフランス人やドイツ人とは違うところです。

 たとえば、トランプ大統領は就任早々、環太平洋パートナーシップ(TPP)や気候変動抑制のためのパリ協定からの脱退を宣言しました。アメリカ第一主義に適わないという理由です。しかし、今はトランプ氏はTTPへの再復帰を検討するよう関係者に支持したと報じられています。

 アメリカ第一主義という信念は変えないものの、現実の状況変化には柔軟に対応するトランプ氏の実用主義にもとづく言動は、しばしば一貫性がないと批判されます。しかし、ビジネスマン出身の本人の中では矛盾はないと想像されます。

 同時に信仰者も同じような行動が歴史上散見されます。それは神が突然啓示を与え、一般常識では考えられないような行動を要求することがあるということです。古くは山頂に方舟を建設するよう神に命じられた旧約聖書のノアの話があります。

 無論、今は神が殺戮を容認するような旧約の時代でもなく、キリスト教の信念である人道主義を踏み外した行動は非難される時代です。しかし、北朝鮮や中国のように人道主義とはほど遠い国対しては、人道主義をいったん横において交渉するのがアメリカ式実用主義でもあります。

 そこで問題になるのが実用主義と一貫性の関係です。トランプ大統領が輸入関税を増額で世界との貿易戦争をしかければ、アメリカ第一主義と非難され、自由貿易への一貫性も信念もないのかと疑問を呈されるわけですが、ドア・イン・ザ・フェイスという交渉術を多用するトランプ氏にとっては矛盾はありません。

 ドア・イン・ザ・フェイスは、最初に相手にとって受け入れられないハードルの高い要求を出しておいて、相手が断ることで多少負債を感じたスキに、本当に受け入れてほしい内容を受け入れさせるという心理戦術です。これは現状に大きな変化をもたらすことにも役立つ手法です。

 同時に、現実に則して具体的方針が変わることは、交渉の方便なので問題ないわけです。しかし、このトランプ式超実用主義(功利主義)は、政治の分野で成果を出せるのでしょうか。そこには弱点もあります。それは目まぐるしく変わる方向転換に側近がついていけないことで、大きなことをなし遂げるために必要な人材が育たない可能性があることです。

 これは交渉相手との関係以上に重要で、毎日テレビに登場するサンダース大統領報道官の苦渋に満ちた表情が、それを伺わせています。自分の足元の人間関係の亀裂は政治家にとっては致命傷になりかねません。中国も北朝鮮も、あるいはロシアもその弱点を熟知していると思われます。

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