アメリカが歴史的会談と呼んだ27日に行われた韓国の文在寅大統領と北朝鮮の金正恩委員長の南北首脳会談は、「板門店宣言」を持って幕を閉じました。まずは世界の注目を集め、日本を含む多くの外国メディアが長時間に渡って実況中継し、朝鮮半島が過去のいかなる時代よりも世界の注目を集めた点で両国の思惑通りの結果だったといえそうです。

 米朝首脳会談の下準備とも言われる今回の南北首脳会談ですが、昨年、文在寅政権が韓国に誕生して以来、全ては金正恩ペースで動いていることを今回も見せつけました。耳障りのいい「平和」の一文字で文在寅氏を抱き込むことで、南北分断の当事国の問題は当事国同士で解決する道筋を示し、日米などに触らせない状況を作り出す第一歩を踏み出した形です。

 疑心暗鬼な日米のメディアは、今回の板門店宣言について「踏み込んだ具体的内容がなかった」「非核化について具体的目標期限は示されなかった」などの批評をしています。しかし、非常に表面的なことにこだわる朝鮮半島の人々にとっては、映像で南北首脳が板門店の庭を手をつないで歩き、親しく話し合う姿を世界に放映することで新時代が到来したことを印象づける方が重要だったといえます。

 それより外国メディアが板門店宣言の中身の分析を追われるのは、徒労かもしれません。今はトランプ大統領が会談を受け入れるために内容を詰める必要がありますが、実は外交上の約束事は1日で翻すのが北朝鮮の得意技ともいえます。

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 美辞麗句を散りばめた板門店宣言は、交渉相手がアメリカということもあり、なんとかアメリカが飲み込めるように内容をぎりぎり詰めたと思われますが、同時に南北は裏交渉を続けていることは過去の経緯からいって確かといえます。今後、文在寅氏はトランプ氏に南北会談の報告をする際、表には出ない内容がどこまで出てくるかも注目すべき点でしょう。

 しかし、中国や韓国、北朝鮮における条約、協定、宣言などの外交上の約束事の意味は、われわれ日本人や欧米人が考えるほど重くはないことも知っておくべきでしょう。それは日本企業が中国などで日々遭遇していることでもあり、契約締結後に項目内容の変更を迫ってきたり、中国企業の都合で契約が骨抜きにされたりする例は多いということです。

 三権分立を装っても司法は政治の支配下に置かれていることは、中国のみならず、昨年来の韓国の2人の大統領逮捕などを見ても明らかです。北朝鮮に至っては金正恩委員長が法です。そこでは過去との整合性などなく、正当性はあとからつける場合が多いのが常です。

 たとえば、日本がポツダム宣言にサインした後、やはり敗戦は認められないなどとして戦争を再開するなど考えられませんが、朝鮮半島や中国では起きうるということです。彼らのロジックは強い者が国を支配し、法を定め、思い通りにできるという完全に内向きの論理しかありません。

 彼らにとっての外交のルールの重みは、日本人生や欧米人が考えるものとはまったく異なり、そのために日本は従軍慰安婦問題などで苦労してきたわけです。アジア諸国では、未だに国民に公共意識はなく、家族の論理しか存在せず、韓国では、せいぜい金家などの氏族意識や地域意識が精一杯で、内向きのルールしか存在していません。

 つまり、ソトとの約束事など、いつでも破れるものだということです。過去に親しくしていた韓国人に「家族を大切にする韓国で、どうして子供誘拐を誘拐し、海外に売るなどということが起きるのか」と聞いたら、「誘拐する子供は自分の子供ではないからね」と即答でかえってきました。

 この強烈な内向きの論理からすれば、外交は非常に遠い話です。朝鮮半島の人は美辞麗句を駆使することが日本人以上に得意です。しかし、言葉通りに具体化するのは苦手です。事が動く原動力は言葉ではなく強い感情です。しかし、感情は毎日変わります。

 言葉の重みを軽視し、内向きの論理しか持たない人々と交渉するのは大変です。しかし、南北朝鮮に住む人々は、言葉で動くのではなく、感情で動くため、今後の情勢もその感情の動向を注視する必要があるといえます。

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