会員制交流サイト(SNS)最大手の米フェイスブック(FB)の個人情報大量流出問題で、FBのサイトに情報の不正取得を組み込んだアプリを掲載したことが疑われている英政治コンサルティング会社ケンブリッジ・アナリティカ(CA)は今月2日、関連会社とともに破産手続きを申請したことを発表しました。

 同問題でFB側は、個人情報を不正取得された被害者が全世界で8,700万人以上にのぼることと認め、ザッカバーグ最高経営責任者(CEO)が先月、議会証言を行い、再発防止に取り組ンでいる最中です。FBは同問題で2月以降、株価が急落し、時価総額で1200億ドル(12兆7,000億円)近い価値を失ったとされています。

 情報の不正入手を疑われているCAは、2016年のアメリカ大統領選でトランプ陣営に有利となる選挙運動に入手した情報を利用した他、英ブレグジットの国民投票への利用にも疑いが持たれています。

 CAは声明で「この数カ月間、多くの根拠のない批判の的にされた」と不正を改めて全面否定する一方、疑惑報道により顧客離れが止まらず、事業継続が困難になった状況を明らかにしました。大規模な個人情報不正取得で会社が廃業に追い込まれた事態の背景に何があったのでしょうか。
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 国政を左右する大統領選挙や国民投票には多額の資金が投入されていますが、過去には有能でカリスマ性のある人物や多数派を形成する政党、政治信条と政策、さらには企業や組合などの組織票が幅を効かせていました。しかし、既存政治離れが進む今、ポピュリズムの台頭で浮動票が大きなパワーを持つようになり、結果として、選挙は世論に大きく左右されるようになりました。

 その世論形成に最も有効なのがSNSとされ、SNSを通して流される情報が選挙を左右するようになり、フェイクニュースを含め、情報戦が選挙の鍵を握っています。しかし、SNSという新しいメディアは、正確さや公平性、客観性を問われる既存のTVや新聞などと異なり、無法地帯でもあるわけです。

 実はSNSが影響力を増す背景には、既存ジャーナリズムへの不信感の増大という事情もあります。公平性とか言いながらも、商業ジャーナリズムは視聴者や読者が好むスキャンダラスな報道が大勢を占め、重要だが注目度の低い情報は抹殺される場合も少なくありません。

 同時にメディア自体が思想性を帯び、その思想に合ったような報道をすることで有権者を誘導することも多々あります。同時に興味深いことは、国家の首長を決める選挙や総選挙では、多くの先進国で既存マスメディが選挙予想を外している現象が起きていることです。

 最も情報を持っているはずの既存メディアが分析を誤り、予想を外す現象は何を意味しているのでしょうか。

 一方、選挙では情報入手のみならず、無理やり候補者のネガティブスキャンダルを起こす手法も取られている。今回廃業に追い込まれたCA社のアレクサンダー・ニックスCEOは、英TVニュース番組のおとり取材で「候補者にダメージを与えるためなら、収賄や売春婦を使ってワナにかけることも辞さない」と発言する場面が隠し撮りされ、衝撃を与えました。

 結果的に、これら捏造に近いスキャンダラスな情報が既存メディアやSNSを通して流されることによって、民主主義の根幹が揺さぶられている状況が生れています。さりとて言論の自由を保障する自由主義社会では、規制強化は非常に難しいのも事実。FBのザッカバーグ氏が議会証言で認めた「認識が甘かった」では済まされない深刻な事態ともいえます。

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