leadership

 長年、世界中から学生が集まるフランスのビジネススクールで、日本的経営の講義を担当した経験から、受講者が最も拒否反応を示す一つが、自分の直接の上司に対する日本人社員の姿勢です。このことは日系企業でのグローバルビジネス研修でも議論になっています。

 欧米人が違和感を持つのは、会社の業績を上げることに集中する社員より、ボスの満足のためにボスの顔色を見ながら働く社員の方が多いという企業文化。たとえば、日本的マネジメント手法に報・連・相がありますが、報・連・相に慣らされている日本人従業員が海外で欧米人の上司とこの問題でトラブルになることも多々あります。

 特に海外で日本人が欧米人の部下の場合、新しい自分のボスに対して、執拗なほど報・連・相を行い、ボスを困惑させるケースが報告されている。私が研修を担当した英国にある日系自動車部品メーカーで部長を勤める英国人は、日本人部下から毎日、指示を仰ぐ大量のメールを受け取り、困惑していると相談されました。

 私は、そんな時、部下が微に入り、細に入る報・連・相は行うのは、通常、日本企業内では3カ月程度で、そのうち、上司が何を望んでいるか、どんな仕事のスタイルなのかを理解した時点で、報・連・相の頻度は低くなっていくのが常だと説明しています。

 日本の企業では、部下は上司を喜ばせ、評価されるために働くという側面が強く、それも上司の人間性や価値観、何にこだわり、何を喜び、何を嫌うかなど、およそ仕事と直接関係のない事柄まで知ることが重視される面もあります。今は薄れつつあるとはいえ、家族的経営の痕跡ともいえます。

 この話を欧米人の学生が聞くと「絶対ありえない」「それは腐敗を生むのでは」と言い出す人もいる。例えば欧米企業の職場でも、上司に評価されることに部下は必死になります。しかし、人間的に上司に気に入られようとする人間は「ごますり」とされ、軽蔑される。

 あくまで会社への貢献度を評価するのが、自分の上司の仕事であり、その評価で昇進や昇給が決まるという認識です。ボスの音楽や食べ物の趣味など個人的な嗜好に興味を持つと勘違いされてしまう。それにボスのために働くというメンタリティは極めて薄い。

 リーダーシップについてPM理論というのがあります。P機能(パフォーマンス=目標達成機能)」とM機能(メインテナンス=集団維持機能)の2つの能力要素でリーダーシップの傾向を論じたもので日本人の三隅二不二氏が提唱し、世界的にも知られた理論です。

 この理論からすれば、日本はこれまで終身雇用や年功序列で、圧倒的にM機能重視で会社を運営してきた過去があります。ところが終身雇用も年功序列も機能しなくなり、なおかつ放っておいても会社や上司への忠誠心が当り前だった時代は、終わろうとしています。

 M機能が大きい時代には、福利厚生が手厚く、親父的な上司が尊敬されていましたが、グローバル化が進む時代には、P機能が優先され、同時に上司には、会社や上司に対する部下の忠誠心や組織への帰属意識に頼らないリーダーシップが求められています。

 その場合、当り前のことですが、上司ではなく、会社への貢献と個人のモチベーションを高める方法が重視されることになる。過渡期にある日本では、昔ながらの家族的経営を職場に期待し、父親的上司を好む文化から、合理性や個人重視の文化へと少しずつ変化を遂げているように見えます。

 とはいえ、西洋人のように小さい時から自己選択の訓練を受けているわけでもない日本人には、個人重視よりも、職場での上下関係を重視する方が楽という考えや、温かい職場環境を好む傾向もあります。
 
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