Trump_and_Macron_III_July_2017
  親子のようなこのふたり、どこか似ている

 史上最年少の39歳の若さで昨年登場したフランスのマクロン大統領は、今月14日で就任1年が過ぎた。就任当初57%だった支持率は、今は国鉄 (SNCF)労働改革で労組の強い抵抗に遭っているにも関わらず、50%と悪くない数字です。これはマクロン氏がどんな支持層に支えられて登場したのかを物語るものでもあります。

 フランスの大統領は元来、法的根拠はありませんが、外交が中心で、内政は首相にまかせるのが慣例でしたが、サルコジ時代にその不文律が壊され、以来、大統領も内政に深く関与するようになりました。実際、マクロン氏と2人3脚のフィリップ首相の最新の支持率も54%とまあまあ悪くない数字です。

 このまあまあ悪くないというのが、実は重要に感じられます。フランス人は熱しやすく冷めやすい人たちで、圧倒的人気の政治家は、たとえばサルコジ元大統領は65%と高い支持率で意気揚々と船出しましたが、政権末期は25%まで落ち込み、オランド前大統領の末期は20%を切ってしまいました。

 マクロン氏は昨年、国民戦線のルペン候補に勝って大統領になったわけですが、中身は極右のルペン氏勝利の阻止票も多く、400万人が投票する候補者がいないと棄権した中での勝利でした。圧勝でも絶対的支持というわけもなかったわけで、ただ、いえる事は既存大政党を嫌った有権者の支持がマクロン氏をこの1年間支えてきたということです。

 そのあたりは、アメリカのトランプ大統領と似ている面もあります。つまり、既存政党やエスタブリッシュメントに嫌悪感を持ち、根本的に政治を変えてほしいという、さまざまな考えを持つ幅広い有権者が支持母体だということです。

 マクロン氏は外交においては国際協調路線で、アメリカのイラン合意破棄や米大使館のエルサレム移転には明確に抗議する「物言う大統領」で存在感を示しています。EUに対してはEU改革の先頭に立ち、力を失いつつあるドイツのメルケル首相に代わり、ユーロ圏の発展でもポジティブな姿勢を打ち出しています。

 内政では、昨夏、支持率急落を招いた「私が(3軍の)長」「決めるのは私だ」と言い放ち、国防予算削減を公に批判したヴィリエ総合参謀総長を辞任に追いやったことや、それに続く労働法改正案の成立で議会を通さないオルドナンス(政府の委任立法権限)を使い、強行したことなどで批判されましたが、それでもこれまで1人勝ちの状態です。

 就任1年を挟んで、現在進行中の国鉄改革は、どうやら労組との合意は得られそうにないので当初の予想通り6月28日までストライキは断続的に続きそうです。しかし、労組側も国民の支持を得られているとは言い難い状況です。ここでもしマクロン氏が国鉄改革を前進させられれば、マクロン氏の手腕は確かだといわれる可能性も高いといえます。

 フランスは今、既存政党をいったん捨て、右でも左でもない中道のマクロン氏に賭けている状態です。既得権益を持つさまざまな組織に手を突っ込み、時代と現実にあった改革を着実に実行する先には経済再生と失業問題の大幅な改善があります。ブレグジットを利用して金融機関誘致に必至なのもそのためです。

 5月のメーデーの抗議デモで「Macron, ca suffit ! (もうたくさんだ、マクロン!)」と声を上げたデモ隊、国民の7割がマクロン改革は「富裕層を優遇する為の改革だ」「金持ちばかり優遇され、労働者は人間扱いしていない」と批判していることを尻目に、まあまあの支持率を保っている意味は、それなりの国民の期待感があるからだと私は見ています。

ブログ内関連記事
米議会で特別講義したマクロン仏大統領に見るフランスのエリート主義