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「毛沢東 レッド・グリッド No.2」ワン・グワンギ 1988年作


 1989年に起きた天安門事件の翌年、日本中国文化交流協会の創設メンバーの一人で後に同会会長になった作曲家の故團伊玖磨氏が中国を訪れた時の話を、ご本人から聞いたことがあります。團先生は当時、会長だった作家の井上靖氏に「ちょっと様子をみてこい」といわれて訪中したといっていました。

 團先生は中国の要人に会い「ロシアは共産主義下でも、プロコフィエフやショスタコーヴィチなど歴史に残る世界的作曲家を産み、チャイコフスキーコンクールなども行っているが、中国は共産主義下で一人も世界的評価を受ける芸術家を生み出していない」と言い放ったそうです。

 「相手は中国共産党の幹部で、私の指摘に顔を真っ赤にして聞いていた」と團氏は私にいっていました。つまり、面子を何より重視する中国で痛いところをつかれたという話です。私は芸術はその国の文明度を知る一つの指標だと思っています。たとえば、芸術家にとって重要な「自由」が確保されているかどうかという視点もあります。

 スペインのバスク自治州ビルバオ市にあるビルバオ・グッゲンハイム美術館では、天安門事件の起きた1989年を前後して中国のアートは何が変わったのかを問う「1989年以降のアートと中国:シアター・オブ・ザ・ワールド」展(9月23日)が開催されています。

 世界に衝撃の映像が配信された学生抗議運動を軍事弾圧した6月4日の天安門事件は、文化大革命以降、改革開放経済のもと、比較的自由な知的、芸術的探求があった10年を終わらせた事件でもありました。

 同美術館の本展についての解説文では「現実的なイデオロギーから逃れるための批判的な姿勢と自由なかたちの概念芸術を用いて作品を制作している中国および世界の60組のアーティストによる作品を通して、現代中国の経験を定義することを試みた」と書いています。

 たとえば天安門事件を挟んで活動し、文化大革命のプロパガンダなどを皮肉った政治的テーマの多いワン・グワンギの作品の変化は、中国の現代美術の変遷を物語っています。無論、事件以降、国外に逃亡した芸術家の作品も紹介されています。

 皮肉にも、ワン・グワンギを含む中国の何人かの芸術家たちは、超富裕層となり、その贅沢ぶりが批判されたりもしていますが、興味深い展覧会といえます。

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 ビルバオ・グッゲンハイム美術館

 ビルバオ・グッゲンハイム美術館はスペイン・バスク自治州ビルバオ市にある、現代美術専門の美術館で、世界で精力的に美術館事業を展開しているグッゲンハイム財団が1997年にオープンさせた美術館。なんといっても建築家フランク・O・ゲーリーが設計した曲線を基調とした大胆なフォルムを持つ建物が強烈なインパクトを与えています。

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