ロシアで開催中のサッカーのワールドカップ(W杯)は、日本代表チームの予想以上の善戦に期待が高まっています。特に開催直前になってチームをW杯にまで導いたハリルホジッチ監督を解任し、西野朗前技術委員長を後任監督に据えた決断が功を奏しているとの見方が出ています。
ただ、日本サッカー協会の田嶋会長がハリルホジッチ氏の解任理由の中で、選手やコーチら周辺を含めた聞き取りで、選手たちとの「コミュニケーションの溝」や「信頼関係の喪失」があったと結論づけたことは、世界的に見れば納得できる説明とはいえないでしょう。
この決定行為は、たとえ日本チームがW杯で勝ち進んだとしても、今後の海外からの監督調達に暗い影を投げかけたといえます。マスコミの「監督はやっぱり日本人の方がいい」とか「ハリルホジッチは日本人を理解していなかった」などという安易な結論を語るのは、今後の日本サッカーの将来性という意味でも時代に逆行するものだと思います。
確かに、世界で引っ張りだこになるような日本人監督が、ほとんどいない現状もあります。しかし、だからといってハリルホジッチ氏に期待した得点力強化のための選手の1対1で戦う強さや縦パス強化など、強靱で優れた身体能力で攻撃的サッカーをするのは、結局、日本人には合わないというのもおかしな話です。
精神的にも肉体的にも限界を感じ、やっぱり日本人が得意とするチームワークを生かすパスでつなぐサッカーに回帰したから、勝ち進んでいるという分析もおかしい。ハリルホジッチ監督の下で精神的にも肉体的にも疲れた日本選手が日本人監督のもとで日本人本来の強みを発揮しているというのは私には退化にしか聞こえません。
実は、企業も同じような課題を抱えています。大企業がアメリカ人など外国人のトップを迎えることも少なくない時代、やはり外国人の下では日本人は結果を出せない、マネジメントがうまくいかない、モティべーションが上がらない、日本人の強みのチームワークも発揮できないという声も聞きます。
海外に進出した企業も現地ナショナルスタッフをトップに据えるケースが増えていますが、うまく機能している企業はなかなかありません。結果を出すためには無論、日本人同士では手に入れやすい人間関係の構築、チームの一体感、安定した落ち着いた空気、話しやすい環境づくりは必須です。チーム構成員の不満に対してリーダーは説明責任があります。
日本人リーダーは、日本人に対してはそれを持ちやすい側面もありますが、現状では日本人同士でも一体感を得るのが難しい時代に入っています。平均年齢が高い今回の日本代表チームで機能していることが、若い世代間で機能するかは大きな疑問です。非常に若い選手が活躍する外国チームとは違った課題が見えてきます。
リーダーにとって重要なのは、誰もが納得できる普遍性を持った強い信念を持つことと、それをどんな相手にも伝えるコミュニケーションスキルです。それはそこで働く全ての人にも必要なことです。ハリルホジッチ監督のコミュニケーションスキルを疑うなら、海外で活躍する日本選手のコミュニケーションスキルはどうなのかといいたくなります。
それに日本人はすぐに精神論を話し始めますが、今の日本人の精神力が海外に比べ、強いなどとは到底いえません。日本はあらゆる意味で大きな岐路に差し掛かっているといえそうです。
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