Brett_Michael_Kavanaugh

 アメリカは最高裁判事指名で連日、ブレット・カバノー米最高裁判事候補(53)の高校や大学時代の性的不品行疑惑が報道され、大きな注目を集めています。最高裁判事は保守の共和党寄り、リベラルの民主党寄りの判事で構成され、終身なために政権に左右されずに長期にアメリカの最終的法的判断を下す重責を担うことになるので、注目度も高いといえます。

 カバノー米最高裁判事候補(53)は24日、米保守系メディア、フォックス・ニュースに妻と共に出演し、「私は逃げも隠れもしない」と候補を辞退しない意向を示し、さらに「高校時代は童貞だった」とまでいって、疑惑を否定しました。

 疑惑は、高校時代にカバノー氏に服を脱がされそうになったと名乗り出た、カリフォルニア州パロアルト大学のフォード教授(51)、次はカバノー氏と同じ時期にイェール大学に在籍していたデボラ・ラミレスさんが、当時開かれた大学のパーティーで、カバノー氏から顔に性器を突きつけられたという性的不品行が訴えられている問題です。

 ここでアメリカ国民の多くが思い出すのは27年前の1991年に起きた、最高裁のクラレンス・トーマス判事承認で浮上したセクハラ疑惑です。トーマス判事は史上2人目の黒人最高裁判事候補でした。何とかして保守系最高裁判事の承認を阻止したい民主党は、トーマス判事の元部下であった黒人女性、アニタ・ヒル女史のセクハラ疑惑を持ち出したのです。

 セクハラをめぐる事実関係に関するトーマス氏とヒル女史の当事者2人が議会公聴会で「直接対決」するという事態は、重職である連邦最高裁判事への就任への承認という極めて重要な問題でもあったために非常に注目されました。

 ここで思い出すのは、フランスの日刊紙、ル・モンドが当時、この問題を取り上げ、「子供染みた性的潔癖症で揺れるアメリカ」と評し、半分笑うような記事を掲載したことです。フランスなら大統領候補が高校時代に犯した性的不品行な問題にならないし、オランド前大統領は就任期間中に女優と浮気しても問題にはなりません。

 ミッテラン大統領やシラク大統領は、隠し子がいることを公言したほどです。無論、過去の犯罪歴があれば最高裁判事ともなれば、フランスでも問題視されるでしょうが、高校や大学時代に犯した性的不品行やドラッグ使用が、50歳を過ぎた時点で影響を与えるとは考えられません。

 フランスやイタリアは今はセクハラへの非難が高まっているので多少、世論は変化していますが、それでも緩いといえます。アメリカ寄りの英国でも今回のセクハラ問題で、アメリカ人と価値観を共有しているとはいえません。性的不品行を徹底排除するアメリカの価値観は、キリスト教の価値観に基づくもので、性そのものに対するモラルと人権が大きな影響を与えています。

 皮肉にも、トーマス判事承認の時には、リベラルなはずの民主党が、セクハラ疑惑を持ち出し、今回も明らかに民主党が被害者のフォード氏などを担ぎだしているのは、矛盾しています。なぜなら、同性愛などの性の多様性を否定している保守派が持つ純潔主義のキリスト教的価値観を民主党が利用しようとしているからです。

 クリントン元大統領は、大統領執務室で行った研修生の女性との性的不品行が問題になりましたが、今ではアメリカで講演料が最も高い人気の人物になっています。その意味で国民の理解を得やすい保守的価値観を民主党は政治利用しているともいえます。

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