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 アメリカ在住のサウジアラビアの反体制ジャーナリスト、カショギ氏の駐トルコ・イスタンブール・サウジ総領事館内での殺害は、サウジ側も計画的犯行だったことを認めざるを得ない立場に追い込まれています。そのため、中東のパワーバランスが不安定化する懸念が高まり、世界の株価にも影響が出始めています。

 アメリカを初め、中東の安定化に深く関わってきたフランス、英国、ドイツなどの欧米大国は、中東の大国サウジの独裁体制には目をつむり、軍事、経済関係を強化してきました。アメリカは特に警戒すべきイランとその背後のロシアの台頭を抑える目的もありました。この意味ではサウジへの制裁には西側諸国は躊躇が見られます。

 今回のことで、サウジの言論抑圧を訴え続けたカショギ氏が、最終的に世界に影響力を持つ米ワシントンポストから発信するようになったことで、サウジ政府にとって体制を脅かす懸念と危機感が頂点に達していたことが予想されます。

 そこで思い出すのは、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が、異母兄、金正男氏がクアラルンプールの空港で白昼堂々、暗殺された事件です。同事件では、在外公館など海外にいる北朝鮮要人らが金を持って亡命しないよう、同国の資金集めの中枢にいた金正男氏を、世界の衆目が集る空港で公開処刑し見せしめにしたという見方が有力です。

 英国ソールズベリーで起きた元ロシア諜報員と娘の暗殺未遂事件では、関与を全面否定しているプーチン露大統領が「彼らは裏切り者だ」と公言しており、体制を脅かす人間への残酷は手法での公開処刑を演出し、見せしめにした可能性が高いといわれています。

 中国では、習近平国家主席と対立関係の流れを組む国際刑事警察機構(ICPO)で総裁を務めていた孟宏偉氏が突然、身柄拘束されました。孟氏は習近平氏周辺の中国共産党幹部の腐敗実態を知っているだけでなく、今年7月3日に海南航空集団の王健会長がフランスで謎の死を遂げた事件への関与が噂され、世界に暴露されることを中国政府が懸念したとの見方もあります。

 独裁国家による海外での暗殺行為は、冷戦時代は頻繁に行われていたことですが、グローバル化が進み、SNSなどの新しいコミュニケーション手段の発達で情報が行き交う現在、独裁国家は体制を脅かす存在の口封じを、過去にも使った見せしめという形で公開処刑し始めているとも指摘されています。

 ただ、北朝鮮、ロシア、中国が、西側諸国とは軍事的に対立関係にある中で、サウジは安全保障上は西側諸国の側に立っていることです。だからこそ、真相究明が求められており、体制維持のために残酷な処刑など手段を選ばない国外での見せしめ行為は、強く断罪されるべきものになっているわけです。

 独善的な独裁国家は通常、国際的な客観的評価など気にしておらず、国外での残酷な粛清行為で国際的評価が傷つくことより、体制維持に意識の9割がいっているはずです。カショギ氏殺害は、サウジ国内の言論弾圧を在外の反体制派サウジ人に適応したに過ぎないといえます。

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