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 欧州連合(EU)は25日、英国の離脱協定及びEUとの将来像の大枠となる政治宣言を検討する臨時の首脳会議をブリュッセルで開き、これらに正式合意しました。これで12月に英国が議会承認するかどうかという最終段階に入ったわけですが、議会の承認は未だ不透明な状態です。

 EU側も離脱協定は加盟27か国全ての合意が必要だったわけですが、たとえば、アイルランドと英領アイルランドの国境問題ばかりが議論されていますが、スペインの英領ジブラルタルに9,000人のスペイン人が毎日国境を超えて働きにいっている現状について、協定は曖昧な表記で、スペイン政府は、この問題への明確な明記なしには承認しないと言い出していました。

 結局、EU27か国の首相は協定案の承認と法的拘束力はないものの、将来の英国とEUの関係をヴィジョンとして明記した政治宣言を承認し、EU側は欧州議会などに批准手続きを進める要請を行い、あとは英国議会次第という段階に入りました。

 フランスのマクロン大統領も、ドイツのメルケル首相も「歴史的合意」として、その成果を強調するとともに、英国のメイ首相への信頼を表明し、トゥスクEU大統領は「われわれには批准や交渉など困難な道がなお待ち受けている」と記者会見で述べ、これで終わったわけではないことを強調しました。

 その最大の難関の英議会承認ですが、否決された場合のシナリオは、めまいがするほど大変です。否決の場合、まず、考えられるのはメイ首相の退陣です。実は「EUの脅しに屈した協定案」と批判する離脱強硬派の保守党議員や閣僚がメイ首相の不信任を画策していますが、不信案提出に必要な48人の議員を集められずにいます。

 メイ首相と閣僚が退陣した場合は総選挙が考えられます。さらには2度目の離脱の是非を問う国民投票を行う可能性もあります。国民投票で残留派が過半数を占めれば、離脱しないことになり、離脱派が勝てば、当然、EUとの交渉は振り出しに戻り、来年3月、時間切れで合意なしの離脱になる可能性が高いといえます。

 実は、メルケル首相が今回の臨時首脳会議で述べたように「心境は複雑だ。本当は英国にとどまってほしい」というのが、EU側加盟国首脳の本音です。40年連れ添った英国から一方的に離婚を突きつけられたようなものなので、EUは困惑状態です。

 私の周りでは、たとえばIT系企業で営業部長を務めるフランス人は「出て行きたければ出て行けばいい。もともと考えが違うのだから」と突き放すようにいう一方、「困るのは彼らの側だ」といっています。EU統合推進派のドイツ人の友人の大学教授は「英国の思い上がりだ。1国だけで生き延びていける時代ではない」といっています。

 逆に離脱する側の英国で楽観視する人が多いのは、私にいわせれば、さすが島国、大陸欧州を上から目線で見つづけた習慣が国民に染みついているというしかありません。世界は今も沈まぬ太陽の大英帝国を中心に回っていると勘違いする古い世代も少なくないということです。

 ユーロトンネルが開通した時、英国は「大陸のウイルスに感染しやすくなった」とジョークをいい、フランス側は「フランスには、英国人が見るものは多いが、英国にはフランス人に魅力的なものは何もない」と応じたことを思い出します。

 兆という予算を使って離脱交渉を続け、手切れ金も兆という金額が発生している離婚は、英国には高くつく離婚であることに間違いありません。ここで2度目の国民投票をして残留が決まっても、笑い物になる可能性があります。

 ただ、EUも英国もキリスト教を土台に置き、寛容さと許しの精神はあるので、互いに根に持つようなこともないかもしれませんが、今のところ、残留に舵を切る可能性は低いと見られています。

印象的なのは、今回の承認をEUの側が悲しい合意としていることです。オランダの首相は「敗者はEUだ」いい、欧州委員会のユンケル委員長は「離婚は、両者が敗者だ」といっていることです。

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