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 フランスでほぼ3週間前に始まった黄色い安全ベストを着用した抗議運動は、ドイツやオランダなど、他の欧州諸国に拡がりを見せ、行方が注目されています。フランス政府は。要求されていた一つ、2019年の燃料税の値上げを断念すると発表しましたが、抗議デモは継続の構えです。

 フランス全土の高速道路や一般道の幹線道路に出現した黄色いベストを着た人々は、交通を遮断し、政府の進めるガソリン税の値上げ反対を訴え、11月16日から今に至るまで運動は継続しています。死者まで出し、経済活動に深刻なダメージを与えながら、マクロン政権を追い込んでいます。

 毎週土曜日にはパリなどの大都市中心部で大規模な抗議デモを行い、機動隊と激しく衝突し、破壊行為を繰り返し、シャンゼリゼ通りも戦場さながらで、その過激な行動は世界に報じられています。この運動は核になる主催者がいないことやSNSを通した呼びかけられ、自然発生的に集った人々が展開する前代未聞の形が特徴です。

 当初から、欧州メディアは、欧州内の他の国々に同様な運動が波及するのではと懸念の報道をしていましたが、案の定、ドイツ、ベルギー、オランダ、ブルガリア、セルビアなどで拡がりを見せています。

 今月1日、ドイツ・ベルリンのブランデンブルグ門前に黄色いベストを着て集ったのは、西洋のイスラム化反対運動を行うPegida、移民排斥運動のZukunft Heimat、反メルケル運動を展開する「母国の将来」などの極右団体で、同じ日、ミュンヘンでも抗議デモが行われました。

 参加者は「フランスの黄色いベスト運動は、反欧州連合、現政権の退陣要求という点で目標は同じ」などと説明していますが、ベルリンでは主催者側発表で約1,000人が集ったと報じられています。

 最もフランスの抗議運動に敏感に反応したのはベルギーで、すでに11月16日時点から同国フランス語圏で黄色いベストを着た運動家が登場し、フランス同様、燃油税値下げを主張し、道路封鎖を始めました。11月30日には首都ブリュッセルに飛び火し、デモがエスカレートし、機動隊への投石、車への放火などを行い、逮捕者も出ている状況です。

 一方、オランダでは今月1日にオランダ議会のあるハーグで黄色いベストを着た集団が表れ、燃油問題で抗議デモや道路封鎖を行っており、8日のデモへのSNS上での呼びかけでは、アムステルダムでも実施予定で、すでに当局への届け出がされている模様で、デモ支持者は当初の2,000人から12,000人に増えていると報じられています。

 その他、ブルガリアの首都ソフィアでも、現政権の退陣を迫る抗議デモが、黄色いベストを着た集団によって行われ、セルビアでは、議会内で極右政党を率いるボスコ・オブラドヴィッチ党首が、黄色いベストを着て抗議する場面まで登場しました。

 フランスの黄色いベスト運動参加者の中には、たとえばドイツの極右過激派団体が黄色いベストを着用するのに眉をひそめる人も少なくありません。フランスでは極左も黄色いベストを着て抗議デモに参加しています。それに正体は様々で、共通しているのは各国ともに現政権に対する強い不満です。

 つまり、積もり積もった政治不信の象徴が黄色いベスト運動で、中身は各国で異なるのと、SNSを通じた「共感」をキーワードとしたポピュリズム運動に近いということです。無論、背後に煽動組織があるとの指摘も出ています。SNSにはタイムラグがないので波及もあっという間です。

 民主主義が機能しない状態に陥りつつあるという指摘もあります。政治家や官僚エリートと国民の距離感が生み出したともいえます。こういう形で抗議すれば、国の首長を政権から引きずり降ろし、政策を変更させられるということになると国は極端に不安定に陥る可能性があり、経済活動にも深刻な影響を与えそうです。欧州は暗いクリスマスを迎えたといえます。

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