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   2018年も世界で駐在員が働きやすい国ランキングトップのシンガポール

 英銀HSBCは先日、世界163ヵ国に住む約22,300人の外国人駐在員を対象にしたオンライン調査結果「2018 Expat Explorer Global Report」を公式サイト上で発表しました。調査は「経済」「経験」「家庭」の3つの柱で構成され、各項目毎のランキングも出ています。

 それを見ると総合で4位までは前年調査と変わらず、相変わらずシンガポールがトップ、2位ニュージーランド、3位ドイツ、4位カナダとなっています。上昇率が高かったのはフランスが16位から11位、アイルランドが28位から18位、英国が27位から22位というのが目につきます。

 日本はというと22位から30位と大きく順位を下げました。30位以内では17位から28位に下げたフィリピンに次ぐ下げ幅。注目すべきは日本人駐在員が多いタイも15位から21位にランクを下げたことです。文化の親和度は異なりますが、報酬、キャリアアップ、生活の質には共通点が多いといえます。

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 たとえば日本人駐在員の多いシンガポールと英国を比較して見ると、経済の項目ではシンガポールが全体として3位、報酬6位、経済信頼度は3位なのに対して、英国は全体として16位、報酬20位、経済信頼度は25位で、ブレグジットとの最中ということも考慮すべきでしょう。

 あくまで満足度のスコアで、たとえば報酬に満足かどうか、その国の物価や社会保障税負担の比率とも関係があり、客観的比較にはなっていません。

 経験では、全体としてシンガポールが6位、英国は28位、生活の質もシンガポールが10位に対して英国は25位と低い一方、文化では英国が7位、シンガポールは20位。興味深いのは同化という項目で英国は9位なのに対して、シンガポールは23位なことです。両国共に多文化、多宗教の国ですが、イスラムやヒンズー文化の強いシンガポールはビジネス環境での適応は難しいということでしょう。

 医療に関してはシンガポールが9位なのに対して、英国が世界に誇る医療保険制度(NHS)は実は中身が破綻しており、24位と低く、不動産もシンガポールが9位なのに対して、英国は質の低い不動産も含め、高騰しすぎた結果28位と低かったのも頷けます。

 家族では全体としてシンガポールが5位、英国は27位で経済と似たギャップがあり、教育ではシンガポールが1位で、英国は12位でした。一方、英国がシンガポールより唯一高かったのは差別で英国が6位だったのに対して、シンガポールは14位でした。

 この統計には人種で見る比較はありませんが、私の経験では、たとえば黒人にとってアジア諸国での駐在は非常に難しく、ドイツ系建設会社から中国東北部に派遣された英国系黒人の男性は、数カ月で差別に悲鳴を上げて撤退してしまいました。

 年収だけで見れば、スイスの平均年収は世界で最も収入が高く、196,725フラン(約2,228万円)。次にアメリカと香港が続き、それぞれ年収185,120ドル(約2,070万円)、1,402,663香港ドル(約2,018万円)と、大きな差が見られる。

 外国人にとってキャリアアップや報酬面、職場環境、生活環境で高い評価を受ける国は、当然、優秀な人材確保も容易です。日本はその意味では厳しいものがあります。そのため、さらなるライフワークバランスの改善、キャリアパス、住環境の整備が必要だといえます。

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