フランスのルメール経済・財務相は20日、同国政府が日産及び日本政府に対して、仏自動車大手ルノーと日産自動車の経営統合を要求したとされる日本の報道を否定しました。
ルノーの筆頭株主であるフランス政府は現在、長期拘留が続くルノーのゴーン会長の後任人事を本格化させており、これまでの経緯からすれば、その人物がゴーン氏に代わり、日産・ルノー・三菱自動車のアライアンスを率いる要の人物になるはずです。
フランス政府が経営統合話の火消しに躍起な背景には、最終的に日産に逃げられることを恐れていうからです。私は今月1日発売の月刊テーミスに「マクロンフランス大統領‐ゴーン斬って日産死守へ」という記事を寄稿しましたが、そこで私はルノーにもフランス政府にも日産を支配下に置かなければならない事情があると書きました。
日産は20年前にルノーに助けられたとはいえ、現在の状況は業績的にも経営規模からいってもルノーを上回り、日産としては対等な立場にリセットしたいところです。ルメール経財相は経営統合話を否定する中で今回「われわれにとって最も重要なのは、堅固で安定し、持続可能なルノーのガバナンスだ」と述べましたが、本当は最も恐れているのは、アライアンスの解消です。
約20年前、死に体の日産との資本提携に踏み切ったルノーの当時の会長、シュバイツァー氏は「千載一隅のチャンス」と言いました。当時10年ぶりの赤字に転落したルノーは、同社副社長だったゴーン氏のもとでベルギー・ヴィルボルトで稼働2年の最新鋭工場を閉鎖し、3千人を解雇したばかりでした。
リストラの最大の理由は、自動車業界の国際競争激化の中、競争力強化と主要株主であるフランス政府が財政赤字を削減する必要があったからです。国営企業体質の強いルノーは、シュバイツァー氏がトップに就任した1992年、スウェーデンのボルボとの合併を模索し、ボルボの株主は、ルノーが政府の支配を受ける国営企業体質を持つこと嫌い、実現しませんでした。
ルノーは現在、日産に43・4%、日産はルノーに15%を出資していますが議決権はなく、日産はルノーの連結子会社に甘んじています。ルノーの筆頭株主はフランス政府で、今やルノーにとっても、フランス政府にとっても日産はドル箱になっているわけです。
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日産は20年前にルノーに助けられたとはいえ、現在の状況は業績的にも経営規模からいってもルノーを上回り、日産としては対等な立場にリセットしたいところです。ルメール経財相は経営統合話を否定する中で今回「われわれにとって最も重要なのは、堅固で安定し、持続可能なルノーのガバナンスだ」と述べましたが、本当は最も恐れているのは、アライアンスの解消です。
約20年前、死に体の日産との資本提携に踏み切ったルノーの当時の会長、シュバイツァー氏は「千載一隅のチャンス」と言いました。当時10年ぶりの赤字に転落したルノーは、同社副社長だったゴーン氏のもとでベルギー・ヴィルボルトで稼働2年の最新鋭工場を閉鎖し、3千人を解雇したばかりでした。
リストラの最大の理由は、自動車業界の国際競争激化の中、競争力強化と主要株主であるフランス政府が財政赤字を削減する必要があったからです。国営企業体質の強いルノーは、シュバイツァー氏がトップに就任した1992年、スウェーデンのボルボとの合併を模索し、ボルボの株主は、ルノーが政府の支配を受ける国営企業体質を持つこと嫌い、実現しませんでした。
2014年、オランド左派政権下で国内産業を守る目的で、フロランジュ法が制定されました。同法は工場閉鎖に際し、事前に売却先を探すことを義務づけ、株式を2年以上持つ株主に、2倍の議決権を与えるもので、当然、ルノーの15%の株を所有するフランス政府の議決権も2倍となり、2016年には、経財相だったマクロン氏が、ルノー・日産の経営統合話を持ちかけています。
ルノーは現在、日産に43・4%、日産はルノーに15%を出資していますが議決権はなく、日産はルノーの連結子会社に甘んじています。ルノーの筆頭株主はフランス政府で、今やルノーにとっても、フランス政府にとっても日産はドル箱になっているわけです。
黄色いベスト運動で経済改革が滞り、緊急経済措置で減った税収を補うため、ドル箱日産の主導権を手放す選択肢はありません。アライアンスが失敗すれば、マクロン政権には深刻な痛手になるわけです。だから本音は経営統合ですが、力余って日産に逃げられることだけは避けたいところです。
この30年間のフランス国民の最大の関心事は失業問題。失業率を下げられなければ、どの政権も支持率が低下しています。オランド前仏大統領は雇用拡大を公約したが実現せず、結果的に支持率16%と歴代最低に落ち込みました。マクロン氏も雇用問題は生命線で、自動車産業の存在は大きいはずです。
日産次期会長、あるいはアライアンスの舵取りをする人事は、フランス政府にしても最重要課題です。アライアンスの維持では現在、3社は同意しているものの、ルノーからの借金も完済し、業績でルノーを上回る日産が同等の立場を求めるのは当然ですが、主導権にこだわるフランス政府は応じない可能性が高いでしょう。
仏自動車産業研究所のフラヴィアン・ヌーヴィ所長は「ルノーの安定確保が最優先課題。ゴーン氏から3社連合の経営統合戦略を受け継げる指導者を見出すのが鍵」と指摘しています。その候補者に日本人は今のところいません。
今回の後任人事だけでなく、フランス人は国際機関を含め、あらゆる場面で主導権を握りたがる。欧米先進国で、マネジメントスタイルが最も中央集権的といわれるフランス側が主導権を手放すことは考えにくく、経営統合への交渉を段階的に加速させる可能性は高いといえます。
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