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 日本の哨戒機への韓国海軍駆逐艦からの火器管制レーダー照射問題は、日本の海上自衛隊哨戒機の威嚇飛行問題に移り、韓国側は幕引きのつもりがないようです。グローバル交渉術では、文化の違いによる考え方や遵法意識の違いから、こちらの常識がまったく通用せず、泥沼状態に陥る例は少なくありません。

 一連の流れを見ると、レーダー照射問題は韓国側の単純ですが深刻なミスによって引き起こされ、最初は韓国軍の面子も考え、表に出さずに謝罪してもらって終わろうとしたのが、韓国側は事実を認めず、「日本は謙虚になるべき」「謝罪すべきは日本」などという文在寅大統領の暴言に発展し、それでも日本側が幕引きをしようとしたら、今度は威嚇飛行を持ち出し、謝罪を求めている状態です。

 この流れには前座があり、韓国最高裁が国際協定を無視して、旧徴用工保障問題で日本企業への賠償命令を出し、日本側が遺憾の意を示したことや国内世論が持たないとして朴前政権で結ばれた慰安婦問題日韓合意を破棄する動きがありました。

 そんな状況も見ながら、日本側はさらなる悪化を避けるため、日本の常識から見れば、受け入れがたい言動に対しても日本の国内世論の反発も分かった上で目をつむり、幕引きを計ろうとしたら、相手はそうはいかないと言い出した状況です。これは韓国の面子へのこだわりを超えた次元に足を踏み入れたことを意味しているように見えます。

 つまり、日本が百歩譲って謝罪したとしても、実は最初から収まる話ではないと私は見ています。なぜなら文在寅政権は北朝鮮の傀儡政権といっても言い過ぎではないからです。私の旧友でミッテラン政権時代に金日成主席(当時)に信書を手渡すために2度訪朝したフランス人の国会議員(すでに他界)から興味深い経験談を聞いたことがあります。

「われわれ西側の人間から見れば、北朝鮮の世界観は驚くほどの幻想に満ちているが、彼らはアメリカを中心とした先進国を悪の帝国主義者と呼び、時あらば国家国民を潰し、支配しようとしていると国民に吹聴し、その世界観を中国やロシアと共有している」といっていました。

 体制維持のために構築した歴史観の死守は彼らにとって最も重視すべきものだということです。異文化理解には相手がどんな固定観念を持っているのかを知ることは非常に重要です。グローバル交渉の鍵を握る場合もあります。

 アメリカが非核化を求めて北朝鮮朝鮮への制裁圧力継続し、日本が同調していることに業を煮やした北朝鮮は、昨年5月6日の北朝鮮の労働新聞で「核を放棄するまで制裁や圧力を継続すると主張する日本は1億年たっても北朝鮮の神聖な地に足を踏み入れることはできない」と批判したことが報じられました。

 今、米朝首脳会談でさらなるヒーロー化をめざす金正恩労働党委員長にとって、最も邪魔な存在はアメリカの同盟国で東アジアで存在感を持つ日本でしょう。もともと北朝鮮主導の朝鮮半島統一で動く文在寅政権にとっても同じことで、長年、継続してきた反日教育を総動員し、日韓関係を冷え込ませることは北と文在寅政権のシナリオだといえます。

 日本のメディアの多くは日本の経済力低下で東アジアでのプレゼンスが下がっているかのように報じられていますが、実際には安倍政権になってから、アメリカの属国と見られた日本は、独立国として経済だけでなく政治的にも存在感を強めており、それが中国や北朝鮮を不快感にしている。

 日本が国際社会で発言権を増すことは、反日を拠り所に体制維持をしてきた中国や北朝鮮にとっては非常に都合の悪い話です。そのため、彼らは今、本音を隠し無関心を装った日本軽視のポーズをとりながらも、日本封じ込めに躍起になっているというのが、私の見立てです。

 北中心の朝鮮半島統一のシナリオは、中国にとっても都合がいいわけで、見えないところで強烈なバックアップをしているはずです。だから、日韓外交には北朝鮮と中国がかつてない強い影響を与えているといえます。米朝首脳会談を利用し、北中心の朝鮮統一の野望を実現するワンチャンスに懸けているように見えます。

 その懸けに乗る文在寅政権は今、支持率を落とし、経済危機に陥る寸前です。反日政策で国民の目をそらそうとしていますが、危ない橋を渡っているのは確かです。日本はその状況を熟知した上で、今や対韓外交は、今まで以上に背後に北朝鮮と中国の存在がある事を念頭に、さらなる関係悪化を避ける冷静で慎重な対応が求められているのだと思います。

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