フランス・ボルドーのワイナリーを中国人投資家が買い漁っている話は数年前から話題になっていますが、昨年は中国・大連に拠点を置く海昌集団が所有するボルドー地方ワイナリー10軒が、フランス財務警察によって、脱税容疑で差し押さえられる事件も起き、注目されました。
そして今度は、買収した由緒あるシャトーワイン銘柄を中国市場で売るため、シャトー名を中国人に馴染みのあるものに変更していることが問題視され、フランスのワイン業界で議論が沸騰しています。きっかけはボルドーワイン評議会の副会長を務めるフィリップ・ソレルス氏が、今年退任予定のジュペ・ボルドー市長に手紙を送って不満を訴えたことにありました。
地元ボルドーに隣接したタランスで生れたソレルス氏は、自らワイン畑を所有する人物ですが、実は20世紀を代表するフランスの作家、映画作家であり、フランスだけでなく世界的にも著名な文化人です。そのボルドーの重鎮的存在のソレルス氏が、「衝撃的事件」と評して、フランスの歴史を根底から変更する行為に強い不快感を示したわけです。
たとえば、シャトー・ラルトーは中国の三皇五帝の一人「兎皇帝」を意味する「ラパン・アンペリアル」、シャトー・セニャックは中国で愛されるチベットカモシカを意味する「アンティローブ・チベタン」といった具合です。チベットカモシカは毛皮入手にための密猟で絶滅しかけ、北京五輪の5つのマスコットの一つ。
その地の歴史に由来しない、それも中国で売りさばくためだけにシャトー名が変更され、それがワインボトルのラベルに刻印されることに、ソレルス氏は「歴史の一部の消滅だ」と強く非難し、見過ごせない事態と抗議しています。歴史や言葉に敏感な作家の発言だけに波紋が拡がっています。
フランスでは、外国投資家にさまざまな伝統的なものが買収されていますが、通常は世界に定着したブランド力を利用することの方が権威付けができ利口な選択と考えられています。ところが長年、中国共産党によって鎖国のような状態にあった中国では、一部の富裕層を除き、多くの人々が世界のブランド名を知らないのが現状です。
ボルドーのワイン業界関係者の中には、シャトー名が変更されても、たとえばサンテミリオンのように地域名が変わるわけではない大したことではないという人もいます。中には名称変更も歴史の1部でこだわる必要はないという人もいます。一方で中華思想による世界支配の一貫と警鐘を鳴らす人もいます。
ボルドーにはワイン生産者が所有する約6千の葡萄園が存在し、現在、140の葡萄園が中国人に所有されていると言われています。ボルドーの重鎮、ソレルス氏の発言で波紋が拡がる一方、カリフォルニアやオーストラリア、チリワインに押され苦戦が続くフランスのワイン業界としては、背に腹は換えられないという事情もあります。
それにブルゴーニュと違い、海外輸出の歴史が長く、大量生産体制でビジネスをしてきたボルドーとしては、外資には慣れているともいえます。ただ、次々に名称変更されることには、強い抵抗があるのも当然といえることです。
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ボルドーのワイン業界関係者の中には、シャトー名が変更されても、たとえばサンテミリオンのように地域名が変わるわけではない大したことではないという人もいます。中には名称変更も歴史の1部でこだわる必要はないという人もいます。一方で中華思想による世界支配の一貫と警鐘を鳴らす人もいます。
ボルドーにはワイン生産者が所有する約6千の葡萄園が存在し、現在、140の葡萄園が中国人に所有されていると言われています。ボルドーの重鎮、ソレルス氏の発言で波紋が拡がる一方、カリフォルニアやオーストラリア、チリワインに押され苦戦が続くフランスのワイン業界としては、背に腹は換えられないという事情もあります。
それにブルゴーニュと違い、海外輸出の歴史が長く、大量生産体制でビジネスをしてきたボルドーとしては、外資には慣れているともいえます。ただ、次々に名称変更されることには、強い抵抗があるのも当然といえることです。
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