「帆を繕う人々」ソローリャ作 1896年
多くの展覧会を観てきた私にとって、この数年で最も感動的な展覧会は何ですかと聞かれれば、恐らくロンドンのナショナル・ギャラリーで開催中の「ソローリャ、スペインの光の達人」展(7月7日まで)をあげると思います。日本ではそれほど知られていないスペインの印象派の画家ですが、画家の描く姿勢や眼差しは100年を超えても輝きを失っていません。
英国では1908年以来となるホアキン・ソローリャ展には、スペインのレティシア王妃と後援の英チャールズ皇太子が出席し、鳴り物入りで始まりましたが、私は個人的に「印象派かくあるべき」という感想を持ちました。いずれも大きなキャンパスが特徴のソローリャ作品ですが、スペインの海岸の有名な風景画や人々の何気ない日常生活が眩い太陽のもとで見事に描かれています。
60点に上る大作で何に感動するかといえば、人間と自然の織りなす素晴らしい世界を見事に描ききっていることです。スペインならではの眩い太陽の光に照らされた人間の表情、肌、衣服は輝きに満ち、ソローリャが得意とした日差しを浴びた水の見事な表現は、光の魔術師といわれるにふさわしいものです。
「悲しい継承」ソローリャ作 1899年
一方、ソローリャには、一点、社会に衝撃を与えた作品があります。それは、ポリオ感染による障害を持つ子供がバレンシアの浜辺で杖をつきながら、修道僧の介添えで立っている痛ましい光景を描いた「悲しい継承」です。周りには元気に飛び回る子供たちがいます。
この作品は、1900年にパリで開催された万国博覧会でグランプリと名誉勲章を授与され、1901年にはマドリードでも名誉勲章を受賞しています。彼は、この作品で世界的脚光を浴びましたが、2度と同じような社会的テーマの作品を描くことはなかったといいます。
私の想像では、痛々しい子供たちをテーマにした自分の作品が売れることへの罪悪感もあったのではないかと思います。その後はきらめく太陽に照らしだされた人間や自然を描き、パリやベルリン、ニューヨークで脚光を浴びました。
しかし、なぜ、フランスにいたモネやルノアール、スペイン人のピカソやダリ、ミロほどに世界的評価を受けなかったのか。ここで書き始めると私の分析は長くなりそうなので書きませんが、暗い20世紀の二つの戦争や科学的理性主義とも関係あるかもしれません。
ソローリャの素晴らしさは、印象派独特の筆致を残す手法の裏に確かな描写力があることです。絵を描くことの基本がそこにあり、同時にその優れた技法を感じさせない勢いと自然さ、画家の温かい眼差しが全ての作品に満ちあふれていることです。絵は知ではなく、心で読み解くものという本質を改めて感じさせてくれます。
ブログ内関連記事
レンブラント・ファンには堪らない没後350年を記念する展覧会がオランダで始まる
日仏交流160周年の70を超えるイベントに300万人が集った意味は大きい
芸術の変遷を学べばパラダイムシフトの本質が技術にはないことが分かる
人間にとって自然界にとって夜は21世紀の新たなテーマ
多くの展覧会を観てきた私にとって、この数年で最も感動的な展覧会は何ですかと聞かれれば、恐らくロンドンのナショナル・ギャラリーで開催中の「ソローリャ、スペインの光の達人」展(7月7日まで)をあげると思います。日本ではそれほど知られていないスペインの印象派の画家ですが、画家の描く姿勢や眼差しは100年を超えても輝きを失っていません。
英国では1908年以来となるホアキン・ソローリャ展には、スペインのレティシア王妃と後援の英チャールズ皇太子が出席し、鳴り物入りで始まりましたが、私は個人的に「印象派かくあるべき」という感想を持ちました。いずれも大きなキャンパスが特徴のソローリャ作品ですが、スペインの海岸の有名な風景画や人々の何気ない日常生活が眩い太陽のもとで見事に描かれています。
60点に上る大作で何に感動するかといえば、人間と自然の織りなす素晴らしい世界を見事に描ききっていることです。スペインならではの眩い太陽の光に照らされた人間の表情、肌、衣服は輝きに満ち、ソローリャが得意とした日差しを浴びた水の見事な表現は、光の魔術師といわれるにふさわしいものです。
「悲しい継承」ソローリャ作 1899年
一方、ソローリャには、一点、社会に衝撃を与えた作品があります。それは、ポリオ感染による障害を持つ子供がバレンシアの浜辺で杖をつきながら、修道僧の介添えで立っている痛ましい光景を描いた「悲しい継承」です。周りには元気に飛び回る子供たちがいます。
この作品は、1900年にパリで開催された万国博覧会でグランプリと名誉勲章を授与され、1901年にはマドリードでも名誉勲章を受賞しています。彼は、この作品で世界的脚光を浴びましたが、2度と同じような社会的テーマの作品を描くことはなかったといいます。
私の想像では、痛々しい子供たちをテーマにした自分の作品が売れることへの罪悪感もあったのではないかと思います。その後はきらめく太陽に照らしだされた人間や自然を描き、パリやベルリン、ニューヨークで脚光を浴びました。
しかし、なぜ、フランスにいたモネやルノアール、スペイン人のピカソやダリ、ミロほどに世界的評価を受けなかったのか。ここで書き始めると私の分析は長くなりそうなので書きませんが、暗い20世紀の二つの戦争や科学的理性主義とも関係あるかもしれません。
ソローリャの素晴らしさは、印象派独特の筆致を残す手法の裏に確かな描写力があることです。絵を描くことの基本がそこにあり、同時にその優れた技法を感じさせない勢いと自然さ、画家の温かい眼差しが全ての作品に満ちあふれていることです。絵は知ではなく、心で読み解くものという本質を改めて感じさせてくれます。
ブログ内関連記事
レンブラント・ファンには堪らない没後350年を記念する展覧会がオランダで始まる
日仏交流160周年の70を超えるイベントに300万人が集った意味は大きい
芸術の変遷を学べばパラダイムシフトの本質が技術にはないことが分かる
人間にとって自然界にとって夜は21世紀の新たなテーマ

