640px-European_Parliament_Strasbourg_Hemicycle_-_Diliff

 欧州議会選挙を2週間後に控えた欧州連合(EU)では、EU議会発足以来、過半数を占めていた2大会派の中道右派「欧州人民党」と中道左派「社会民主進歩同盟」の過半数割れが予想されています。加盟各国では今月23〜26日にかけ、議席数751を巡る選挙が実施されます。

 勢いずいているのは、加盟各国のEU懐疑派やポピュリズム(大衆迎合主義)政党。たとえば、フランスでは、前回の2014年の欧州議会選挙で、約25%のトップの得票で24議席を獲得したマリーヌ・ルペン党首率いる国民連合(RN)が今回も予想でトップです。世論調査では、仏国民議会で圧倒的過半数を占める与党・共和国前進(REM)や与党第1党の共和党(LR)をしのいでいます。

 それも今回は30議席を超えると予想されています。RNは、1980年代に父親のルペン氏が創設した前身の国民戦線(FN)が過激な極右思想で支持を伸ばした経緯があります。娘のルペン氏は新自由主義に反対し、福祉国家モデルを擁護する方向に政策転換し、不人気の社会党などの左派票も取り込み、今や政権政党に近づいています。

 ルペン氏は他のEU加盟国のEU懐疑派やポピュリズム政党と共闘を組んではいますが、既存政党が次々と支持を失う中、単独政権政党に位置づけられるほど今や認知されています。メディアは総じて反RNにも関わらず、政党の勢力拡大は止まりません。

 特にマクロン仏政権が黄色いベスト運動などで支持率を落とす中、RNは再び選挙でチャンスを与えて勢いづいています。ただ、EU内の親EU派にとっては、マクロン氏が創設したREMは、新しい形での親EU派リベラルとして新鮮なイメージを加盟各国のEU支持有権者に与えているのも事実です。

6957954920_e0e3c94f5a_b
    欧州議会選に意欲を見せるマリーヌ・ルペンRN党首

 4月下旬に実施されたスペイン総選挙では、移民・難民問題新興極右政党ボックスが24議席を獲得し、国政に初進出しています。同国でも右派・左派の既存政党が議席を減らしたため、連立を組むのに苦労しています。

 ボックスの政界初進出に、ドイツのEU懐疑派の右派「ドイツのための選択肢」(AfD)が「偉大な勝者」とたたえ、イタリアの極右政党「同盟」を率いるサルビーニ副首相も「ボックスが欧州での同胞となることを望む」と欧州議会でのポピュリズム政党の勢力結集を呼び掛けています。

 では、極右や極左、ポピュリズム政党が3分の1を超える、つまり計255議席を上わるという予想通りの結果になった場合、どうなるのでしょうか。彼らは議会の立法手続きを阻止する存在になり、議会権限を強化しているEUとしては「決められない政治運営」に陥る可能性もあります。2大会派の合計議席が過半数を割り込めば、1979年の直接選挙導入以来、初めての事態です。

 では、なぜそんな状況を各国有権者は望んでいるのか。そこにはEU政治に関わるエリート政治家や官僚に対する不信感があるといわれています。実は欧州議会議員は高い地位が確保され、高給を支給されているわりには、有権者から追求されることのない都合のいい立場でもあります。

 だから、国政選挙で劣勢な人が、ひとまず欧州議員になりたがる傾向もあります。欧州議会議員が多くの特権と高待遇を受けている話は、友人のフランス人欧州議員から、よく聞かされました。

 一方、欧州委員会を形成する委員は、大臣経験者が多く、彼らを支えるEU官僚も超エリートで高待遇を受けるEUのエスタブリッシュメント(支配階級)です。本来、彼らは加盟各国の国民の声に耳を傾けるべきですが、経験と優れた知能で政策決定することが多く、彼らのエリート主義が英国のEU離脱を生んだともいわれています。

 同じ民主主義といっても、なんでも議会承認なしには基本決められない英国と、大陸欧州の大統領や首相に権限が集中する中央集権的民主主義では、意思決定の方法が異なり、EU内でも度々問題になっています。欧州委員会への権限集中が批判され、欧州議会の権限拡大など改革しましたが、状況はさほど変わっていません。

 そこで失業問題や景気浮揚で結果のないEUに対して、各国有権者は欧州議会で過半数を占める2大会派の構図を打破し、EUエスタブリッシュメントの横暴を押さえ込むために、各国内では多数派にはなれないEU懐疑派の政党議員を欧州議会に送り込もうとしている側面もあるわけです。

 しかし、EU懐疑派は壊し屋にもなりうるため、けっしてEUのためになるとは言い難いのが現状です。EU離脱をめざす英国のメイ首相は7日、欧州議会選に参加する意向を表明しましたが、英国では、離脱強硬派の急先鋒で欧州議会議員のファラージ氏が先月、ブレグジット党を立ち上げ、欧州議会選予想ではトップに立っています。

 本音の部分で英国の離脱を望まないEUは、英国の欧州議会選への参加は望むところですが、その一方でファラージ氏のような人間に欧州議会をかき回されることも避けたいところです。

 欧州のエリート主義の行き詰まりは明らかですが、簡単に変化するとも思えません。有権者は嫉妬深く、同時に結果のない政治家には冷たいわけですから、今回の選挙で居心地のいい椅子を脅かされている欧州議員も少なくないということです。

ブログ内関連記事
急ぎすぎた欧州統合がブレグジットやポピュリズムを生み出した
EUクライシスを回避した欧州は今年、本格的な改革着手で勢いに乗れるかが課題
EUが英EU離脱協定を承認 離婚に勝者などいないというEUの見方
ヨーロッパの極右勢力退潮は何を意味しているのか?