Ⓒ Adagp, Paris, 2019 / photo State Russian Museum, St. Petersburg
20世紀の大半を社会主義ユートピアの実現に費やしたソ連邦の試みは、人類史に残る厳然たる史実です。人はいつの時代にもユートピアを求めるものですが、これほど壮大な試みは後にも先にもありません。東西冷戦終結から30年、1世代が変わる時期にパリではソ連邦を芸術面から見る大規模な展覧会が開催されています。
実はフランスは、たとえば俳優で歌手のイブ・モンタンがソ連共産党に傾倒し、ソ連のエリートはフランスで学ぶ長い習わしがあり、フランス語を話す政治家も少なくありません。芸術においてもサンクトペテルブルクにあるエルミタージュ美術館には、フランスの生み出した巨匠作品が多く、冷戦時代から影響を与えていました。
パリのグランパレ美術館で開催中の「赤:ソビエト連邦の芸術とユートピア」展(7月1日まで)は、まさに「赤の時代」と呼ばれた社会主義ユートピア建設に明け暮れたソ連時代の芸術がどうだったのかを検証するものです。
同展では、1920年代以降のソビエト連邦における芸術の歩みを400点以上の作品から振り返り、フランス初公開のものが多く、絵画や彫刻、写真、映画、デザイン、建築といった幅広い分野を取り上げられています。
冷戦終結から30年、今も実は社会主義国家を違った形で追い求める中国の存在が、米中の経済冷戦を展開中ともいえますが、このような展覧会を10年以上前に開催したら、冷戦の記憶の生々しさゆえに冷静に見ることはできなかったかもしれません。
鉄のカーテンの中にあったソ連の作家たちによる芸術作品は、自由世界の人々が目にすることはほとんどありませんでしたが、もし、彼ら社会主義リアリズムの芸術家たちが政治プロパガンダと無縁の世界にいたら、巨匠といわれてもおかしくないような優れた芸術家も少なくないだろうと感じ、ため息が出ました。
ソ連の印象派画家ともいわれたユーリー・ピメノフの「新しいモスクワ」はスターリンの暗黒粛清時代
西洋美術はキリスト教信仰を強化するための道具として使われる前は、人間の肉体美を賛美したギリシャや権力者を伝説化したエジプト時代、皇帝の権威を表した古代ローマ時代、中世以降の王侯貴族、権力者を描いた時代など、多かれ少なかれ、いい意味でも悪い意味でも政治的、宗教的プロパガンダと無縁ではありませんでした。
共産主義下のソ連でも芸術は、政治思想やユートピアのヴィジュアル化に大きな役割を果たしていたことは厳然たる事実です。苦悩する搾取される労働者、理想郷建設の夢に燃える労働者、豊かさを象徴するスポーツを楽しむシーンなど、芸術は言葉以上に人々にインパクトを与えるものでした。
最後のコーナーでは、共産党の同士や労働者とともいるスターリンを讃える作品郡が展示され、ソ連邦を覆い尽くしたマルクス、エンゲルス、レーニン、スターリンの肖像は、絵画や彫像、写真のコラージュは、ソ連の崇拝すべき指導者は誰かを明確に示すものでした。
絵画、彫刻、映画、演劇、音楽など、ありとあらゆる芸術メディアがユートピア建設を後押しするために利用され、社会主義一色に染め上げられていました。しかし、同時にたとえば、絵画や彫刻、音楽は西洋の伝統的技法、近代の技法が維持され、プロパガンダと知らずにみれば、フランスの作家の作品かと思うものも少なくありません。
科学に時代といわれた20世紀、西側とソ連は共有していたもの多かったことを見て取れます。それが中国の文化大革命とは大きく違うところです。冷戦終結から30年、改めて当時の芸術作品を冷静に見ることができる時が来たのかもしれません。
1枚の絵、一体の彫刻は、端的にヴィジョンや主張を表すことができ、人々の心に大きなインパクトを与えるものです。一方で嘘や作り話による洗脳も可能です。だから、優れた芸術家が政治に利用されたのは悲劇というしかありませんが、アジアや南米では、今でも権力者を賛美し、人間崇拝を鼓舞するためにに芸術が利用されているのも事実です。
今回の展覧会は、改めて芸術の底知れないパワーと目的を誤った場合の悲劇を考えさせられるものでした。「自由のないところに新しい創造はありえない」と再度、認識させられた展覧会でした。
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実はフランスは、たとえば俳優で歌手のイブ・モンタンがソ連共産党に傾倒し、ソ連のエリートはフランスで学ぶ長い習わしがあり、フランス語を話す政治家も少なくありません。芸術においてもサンクトペテルブルクにあるエルミタージュ美術館には、フランスの生み出した巨匠作品が多く、冷戦時代から影響を与えていました。
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共産主義下のソ連でも芸術は、政治思想やユートピアのヴィジュアル化に大きな役割を果たしていたことは厳然たる事実です。苦悩する搾取される労働者、理想郷建設の夢に燃える労働者、豊かさを象徴するスポーツを楽しむシーンなど、芸術は言葉以上に人々にインパクトを与えるものでした。
最後のコーナーでは、共産党の同士や労働者とともいるスターリンを讃える作品郡が展示され、ソ連邦を覆い尽くしたマルクス、エンゲルス、レーニン、スターリンの肖像は、絵画や彫像、写真のコラージュは、ソ連の崇拝すべき指導者は誰かを明確に示すものでした。
絵画、彫刻、映画、演劇、音楽など、ありとあらゆる芸術メディアがユートピア建設を後押しするために利用され、社会主義一色に染め上げられていました。しかし、同時にたとえば、絵画や彫刻、音楽は西洋の伝統的技法、近代の技法が維持され、プロパガンダと知らずにみれば、フランスの作家の作品かと思うものも少なくありません。
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