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 過去のどんな時代よりも自分のキャリアアップへの関心が高いといわれる日本では今、上司が部下の能力を最大限引き出すマネジメントスキルが求められています。

 日欧リーダー論比較で、部下の能力を引き出しすリーダーが評価される欧米に対して、組織への忠誠心を育むことを優先する日本という構図は、かなり前から崩れつつある今、部下が自らの成長を実感できるか環境作りは重要さを増しています。

 部下のスキルアップをもたらす上司のマネジメントスキルについて、米マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営大学院のリーダーシップ・センターでエグゼクティブ・ディレクターを務めるハル・グレガーセン氏の質問力に関する実証研究は興味深いものがあります。

 米ウォールストリートジャーナルが掲載したグレガーセン氏のインタビューで、創造的思考への壁を打ち破り、新しい生産的な方向にエネルギーを注ぎ込める質問には5つの特徴がある語っています。それは1、問題を再構成し、2、想像力をかき立て、3、他人の思考を呼び込み、4、異なる答えの余地を生み出すもので、5、攻撃的でないことと説明しています。

 実は上司は上司であるだけで部下にプレッシャーを与えており、部下は上司に評価されることを強く意識するものです。だから保身の心理も働きやすい。日本ではそこに「自分の実績が低かったり、ミスを冒すことで上司に迷惑をかけてはいけない」という忠孝の精神も加わります。

 グレガーセン氏は、基本的に「他の当事者を困惑させたり、屈辱を与えたり、相手に力を誇示したりしてはいけない」と、アサーティブな姿勢を強調しています。これはすでにリーダーシップの有効手段として多くの専門家が指摘してきたことでもあります。

 たとえば、日本でも知られる経営思想家ピーター・ドラッカーは、「最近、『誰でも知っていること』以外にどんな変化が起きているか?」と質問すれば、戦略的思考が活性化させられるという意見をグレガーセン氏は紹介しています。

 「誰でも知っていること」とは、たとえば、ペットフードを扱う会社内で「ペットが小型化し、ペットフードの量的消費が減った」というのは、誰でも知っていることです。つまり、質問は「それ以外にどんな変化があるか」と聞くことで、部下の戦略的思考を活性化させられるということです。

 さらに、そんな変化の逆風の中でも「購入する時点で消費者を喜ばせ、魅力を感じさせるものは何か、使用時にどんなことで消費者は満足するだろうか」と質問すれば、部下は業務時間以外でも消費者の動向に関心を持ち、探究心が高まるという効果があるというわけです。

 質問は部下の創造的思考を啓発する新しい要素が常に必要なので、日々の変化を観察し、その変化に対する自分の意見は横に置き、変化で最も重要と思われることを部下に質問し、シェアすれば「質問に必要な『筋肉』がある程度鍛えられる」といっています。

 さて、ここから先が重要で、部下が自分の抱えている問題で質問してきた場合に、上司はたとえ、適切な解答を持っていたとしても即答してはいけないということです。私も研修で支社長として海外赴任する優秀な人たちの研修をする中で、ケーススタディなどで非常に適切な答えを即答できる人に出会うことは少なくありません。

 しかし、そこが問題です。日本人のリーダーは、上司は何でも知っていて、何に対しても適切な答えを持っているべきと考えるパーセンテージが、統計的に見ても世界で最も高いことで知られています。「育てる」より「教える」意識が強いからともいえますが、即答できなければリーダー失格と思いがちです。

 ところが部下の創造的思考力を引き出すには、そこで我慢が必要です。今、欧米のビジネススクールのリーダーシップで有効とされるのは、部下を「指導する」のではなく「支援する」ことです。それも「じゃあ君は、どうすべきだと思う?」といった無責任な返答ではなく、どのように結論を出すべきかを相手によく考えさせる質問をすべきだといっています。

 それはたとえば「どんな方向性になろうとも、われわれが達成すべき最も重要な事柄は?」とか「決断を難しくしている原因は? 過去にも同じように感じた問題はあった?」といった具体的な質問をすることで、出してほしい結論に向かって思考するよう導くことが重要というわけです。

 そして、部下と共に考えることに集中し、ディスカッションする中で、実は上司も気づかなかった新しい答え、クリエイティブオプションを見つけることができるということです。つまり、このような質問の繰り返しは上司自身にも大きなメリットがあるというわけです。

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