欧米自動車大手フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)は、仏自動車メーカー、ルノーに提案していた経営統合案についての今月5日夜の協議で、ルノーが決定を保留した直後、提案を撤回しました。仏経済紙、レ・ゼコーは、ルノー側の保留は、アライアンス関係にある日産自動車との同案件についての検証が不十分な上、政治環境が整っていなかったことが判断理由だと指摘しています。
米ウォールストリートジャーナル(WSJ)は「FCAのルノー統合案、船頭多すぎて転覆」という皮肉を込めたコラムを掲載しました。コラムの出だしで「フランスでは”船長が2人いると船は転覆する”と言われる。船長が3人も4人もいればどうなるのだろうか?」と書きました。
確かに船頭は多かった。話を持ち掛けたのはFCAの若きリーダー、ジョン・エルカン会長ですが、ルノー側はスナール会長、その後ろには筆頭株主の仏政府のルメール経済相、さらには沈黙していても影響のあった日産の西川広人社長兼最高経営責任者(CEO)と、誰もが物申せる立場にいたことで、エルカン氏は戸惑いを隠せなかったでしょう。
FCAが提案した総額350億ドル規模の統合が実現すれば、世界第3位の自動車メーカーが誕生することになり、日産、三菱自が加われば、4社の世界の総販売台数は年間1,500万台を超え、世界首位の連合体となるはずでした。ところがゴーン前会長退任後のルノー、日産には多くの船頭がいて、即決を下せる要となる意思決定者が不在している状況が浮き彫りになった形です。
確かに船頭は多かった。話を持ち掛けたのはFCAの若きリーダー、ジョン・エルカン会長ですが、ルノー側はスナール会長、その後ろには筆頭株主の仏政府のルメール経済相、さらには沈黙していても影響のあった日産の西川広人社長兼最高経営責任者(CEO)と、誰もが物申せる立場にいたことで、エルカン氏は戸惑いを隠せなかったでしょう。
FCAが提案した総額350億ドル規模の統合が実現すれば、世界第3位の自動車メーカーが誕生することになり、日産、三菱自が加われば、4社の世界の総販売台数は年間1,500万台を超え、世界首位の連合体となるはずでした。ところがゴーン前会長退任後のルノー、日産には多くの船頭がいて、即決を下せる要となる意思決定者が不在している状況が浮き彫りになった形です。
WSJは関係者への取材で「提案が理にかなっているとの考えは変わっていない」「そうした統合が首尾よく進むような政治的環境が、今のフランスには存在しないことがはっきりした」と述べたことを紹介しています。
今回の統合提案は基本的に両社が対等な関係での統合をめざしていました。その一方で、ルノーの15%の株を所有する筆頭株主のフランス政府の存在は大きく、フランス政府から取締役1人を派遣することや、合併による工場閉鎖や人員削減はしないことなどの譲歩案がFCA側から出されていたと伝えられていました。
フランスに政治環境が整っていないというFCA側の見解の理由の一つは雇用問題です。ルノーは現在、国内に6つの自動車組立工場を含む12の産業用地で48,600人が働いており、FCAはイタリアに4つの組立工場を含む27の工場があり、約6万人が雇用されており、関連企業を含めれば、フランスにとってもイタリアにとっても両社は基幹産業です。
レ・ゼコー紙は、ルノーよりもFCAの方が経営状態の膳弱さから、減産による工場閉鎖の可能性が高いとしながらも、製造ラインの共有化などで統合が実現すれば、数年後にはルノーのリストラで人員削減に踏み切る可能性は高いと指摘していました。
統合話について、ルノーがアライアンスを組む日産との協議なしに統合協議を進めたことが破綻の原因の一つだったとされています。その証拠にルメール経済相が「日本のパートナーを排除しないことが条件だ。日産が統合に賛同しなければならない」との認識を示していました。
アライアンスを組む日産の西川社長は、ガバナンス強化のための取締役会刷新の作業が終わり次第、引責退任する考えを表明しており、常識的に考えて、今の日産がルノーとFCAの統合話に意見を言える状況にないのは明らかでした。
ルノーは技術だけでなく財務面でも日産に依存している状況にあり、ルノーが望む日産との経営統合に関しても、日産が反発してアライアンス解消になるような事態は避けたいのが本音。その意味でFCAとの統合より、アライアンスの要だったゴーン元会長退任後の日産との枠組みのリセットを急ぐべきなのに、FCAと浮気しようとしたのはフランス的ですが、判断ミスというしかありません。
それにFCAが近づいてきた背景に電気自動車化の大転換の時期に差し掛かった自動車業界では、莫大な開発資金調達が必要になっており、さらにはルノーがアライアンスを組む日産の電気自動車の先進技術にも魅力を感じていたことも透けて見えます。
フランスに政治環境が整っていないというFCA側の見解の理由の一つは雇用問題です。ルノーは現在、国内に6つの自動車組立工場を含む12の産業用地で48,600人が働いており、FCAはイタリアに4つの組立工場を含む27の工場があり、約6万人が雇用されており、関連企業を含めれば、フランスにとってもイタリアにとっても両社は基幹産業です。
レ・ゼコー紙は、ルノーよりもFCAの方が経営状態の膳弱さから、減産による工場閉鎖の可能性が高いとしながらも、製造ラインの共有化などで統合が実現すれば、数年後にはルノーのリストラで人員削減に踏み切る可能性は高いと指摘していました。
統合話について、ルノーがアライアンスを組む日産との協議なしに統合協議を進めたことが破綻の原因の一つだったとされています。その証拠にルメール経済相が「日本のパートナーを排除しないことが条件だ。日産が統合に賛同しなければならない」との認識を示していました。
アライアンスを組む日産の西川社長は、ガバナンス強化のための取締役会刷新の作業が終わり次第、引責退任する考えを表明しており、常識的に考えて、今の日産がルノーとFCAの統合話に意見を言える状況にないのは明らかでした。
ルノーは技術だけでなく財務面でも日産に依存している状況にあり、ルノーが望む日産との経営統合に関しても、日産が反発してアライアンス解消になるような事態は避けたいのが本音。その意味でFCAとの統合より、アライアンスの要だったゴーン元会長退任後の日産との枠組みのリセットを急ぐべきなのに、FCAと浮気しようとしたのはフランス的ですが、判断ミスというしかありません。
それにFCAが近づいてきた背景に電気自動車化の大転換の時期に差し掛かった自動車業界では、莫大な開発資金調達が必要になっており、さらにはルノーがアライアンスを組む日産の電気自動車の先進技術にも魅力を感じていたことも透けて見えます。
降って湧いたようなFCAの統合提案に対処する余裕などない日産の西川社長ですが、今月3日、統合が実現すればルノーの会社形態が大きく変わるとの見方を示し「これまでの日産とルノーの関係の在り方を基本的に見直していく必要がある」と述べ、ルノーをけん制していました。
今回の破綻の直接原因とも見られるフランス政府の関与を見ると、日産にとっても他人事ではないといえます。企業経営に政府が口を出す、それも他国のフランス政府が日産の経営に影響を与える事態は絶対避けたいところです。
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