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 日米安保条約について、米ブルームバーグ通信が、トランプ氏が側近との私的会話の中で条約を「一方的だ」と断じ、破棄に言及したと報じました。その後、26日放映されたFOXビジネスのインタビューで同様な発言を公の場で行ったことで、トランプ氏の不満は本当だということが明らかになりました。

 安部首相と良好な関係にあり、日米が過去、最も緊密な連携が取れているといわれる中で、両国関係を揺るがす発言だったことは確かです。なぜなら日米安全保障条約は、日本が最も重視する日米同盟の根幹をなすもので、いざとなれば世界一の軍事力を持つアメリカが守ってくれるという日本の戦後の認識を危うくするものだからです。

 同時に安全保障面で日米関係をリセットする機会になることに期待感を持つ日本人もいるでしょう。特にアメリカ側がどう考えているかを大統領の口から聞いたことは非常に大きいといえます。

 トランプ氏はFOXのインタビューで「日本が攻撃されればアメリカは彼らを守るために戦うが、アメリカが支援を必要とする時、彼らにできるのは(アメリカへの)攻撃をソニーのテレビで見ることだけだ」と述べたことでした。

 実は私はフランス、英国、ドイツの大学生を対象に日本が自慢する「海外での武力紛争に対して一切軍事的関与を禁じる」日本の憲法を知っているかどうか調査したことがあります。知っている学生は結果いませんでした。アメリカでも同じようなことだと思います。

 知日派のアメリカ人の友人は「つまり、日本はインドのガンジーがいうような無抵抗主義ということか」と聞かれたことがあります。その友人は「もしそうなら、崇高な見上げた考えだ。アメリカにはそこまでの覚悟はないし、やられるのを指をくわえて見る人間は卑怯者だ」といっていました。

 ハーバート大学でアメリカ外交を研究するフランス人の友人は「アメリカのスタンスは、やられればやり返すのが基本、9・11でアルカイダの関与が明白になった時点で、アフガニスタンを攻撃したのは自明の理だった」と指摘し、事実、他の欧米諸国も賛同し攻撃に参加しました。

 その友人に「キリスト教の教えでは、汝の敵を愛せよ、右の頬を撃たれれば、左の頬を差し出せとあるが、しっぺ返し(ティット・フォー・タット=アメリカ外交の基本)の理屈は矛盾するのでは?」と聞くと、自国を守り抜くには必要なことという答えが返ってきました。

 ユダヤ教には「目には目、歯には歯を」の旧約聖書の報復の論理がありますが、自国を危険にさらす勢力に対しては、先制攻撃も辞さない構えのアメリカからすれば、戦後、一時的に日本封じ込め目的で再軍備を禁じた憲法を、後生大事に平和憲法として維持する姿の方が不思議に映っていることでしょう。

 つまり、戦勝国に忖度し70年以上も不戦の誓いを掲げ、同時に有事の際は世界最強のアメリカ軍に守ってもらおうという構図は、超内向きの論理に支えられたものともいえます。つまり、不戦の誓いは高貴な無抵抗主義ではなく、自ら手を汚さず、金を払ってアメリカの傭兵に守ってもらおうという姑息で偽善的と外からは見えるからです。

 現在の日米安保条約が締結されたのは1960年、岸内閣の時で死者を出す安保闘争が繰り広げられる中で、一応は集団的自衛権を前提とした双務的体裁を整えた一方、沖縄で米兵が犯罪を犯した時にいつも問題になる日米地位協定も定められました。

 しかし、東西冷戦が終結し、中国や北朝鮮の脅威に晒され不安定化する東アジアの情勢変化の中で、トランプ氏が日米安保の不平等性に不満を述べるのは当然ともいえ、単なる軍事力による抑止では収まらない事態も想定され、日本が高みの見物に終始されては困ると言い出した形です。

 戦争は命のかかる話です。それを金で済ませて平和主義というのは説得力を持たない話です。同時に公正さを欠く日米地位協定もリセットが必要です。そういう意味では日米関係を根底からリセットする時期に差し掛かっているのも事実でしょう。

 国益重視のトランプ政権は、冷戦後の世界で結ばれたアメリカから見て公正さを欠く条約や協定をリセットしようというわけですから、今回の発言も当然の発言といえます。NATOの分担金や韓国へ軍事負担への不満なども同様な理由で出てきている話です。

 平和で商売さえうまくいけば、姑息といわれてもアメリカに頼りさえしていればいいなどというのは、日本人として恥ずかしい態度です。トランプ発言は金銭面の不平等にとどまらず、日本人が踏み込んでほしくない日米安保の根幹をなす有事の際のモラルと責任を問われているわけです。

 無論、集団的自衛権に関する安倍政権以降の日本の認識の変化をトランプ氏がどこまで認識して発言したかは疑問ですが、それ以上に日米安保条約に潜む矛盾を少しでもクリアすることが、新たな世界のフレームワーク作りへの参加という意味でも重要さを増しているといえます。

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