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 日本で働く外国人にはさまざまな悩みがあるといわれていますが、その一つは人間関係です。日本の某IT系企業で3年前から働くアメリカ人D氏はツイッター上で「日本人は組織の犬だ。友達には到底なれない」と口の悪いコメントをツイートし、何人もの外国人が共感したという話があります。

 D氏は2年間一緒に働いた同僚の一人とはプライベートでも一緒に週末、テニスをしたり、旅行に行ったりする仲で、時には彼の悩み事にも同僚は耳を傾けてくれて、いい友達が日本にできたと喜んでいたそうです。ところが1年前、同僚は人事で地方に配属され、最初の数カ月は、LINEで交信していたのが完全に音信不通になったそうです。

 日本で働く外国人たちが英語でシェアするサイトで、フランス人女性が「私は”組織の犬”というのは言い過ぎだと思うけど、私も10年以上付き合った会社の同僚が転職して、相手にされなくなって、ショックを受けたことがある」と共感を表明、次々に同様な体験をした外国人たちが自分のショッキングな体験をシェアしています。

 あるシンガポール人は、過去に職場で仲の良かった日本人の友人と久しぶりに再開したら「まるで別人のようで、よそよそしいのに衝撃を受けた」と体験を語っています。彼は「日本人は、高校などの同級生とは関係を続ける人もいるけど、会社とか住むところが変わると簡単に関係が切れてしまう」といっています。

 日本という異文化で働く外国人にとって、日本人の友人作りは重要です。私も某自動車メーカーで講演した時、海外赴任して異文化を理解する方法を質問され「決して多くの友人を作る必要はないが、数人のナショナルスタッフやプライベートで会う現地の人と深い友人関係を作るのは重要。そこから相手の文化が見えてくる」と答えたことがあります。

 私の妻はフランス人ですが、日本人同士の夫婦でフランスに赴任し、彼らが5年間で学ぶフランス文化を私は多分数カ月で学んだと思います。なぜなら、妻を通じて、かなりディープなフランスに接しざるを得ないからです。だから、一人でも現地の人と深い人間関係を作れたら、理解できることも多いというわけです。

 日本人のメンタリティは変化しつつあるといいますが、日本人の組織への帰属意識の強さは、それほど変わっていません。帰属する組織や場所によって、自分のアイデンティティは変化し、なかなか所属とは関係なく、人生の友を作るのは、日本人同士でも難しいと思われます。

 5年間フランスに赴任していた日本人と仲よくなったと思っていたフランス人が、日本に帰国した友人と関係を続けようと思ったのに、まるで他人のような反応に変わったことに驚いたなどという話はよく聞く話です。村社会の日本では、村(組織)の中では守られ(最近は守ってくれない組織も少なくありませんが)、村の外に対しては排他的です。

 終身雇用で組織への忠誠心を強化してきた日本企業も大きな曲がり角に来ています。転職が当り前になる時代が訪れようとしています。そうなれば組織や職位は便宜的なものでしかないという欧米的な考え方にも変わっていくでしょう。そこで重要になるのは自分自身の変わらないアイデンティティです。

 組織に対して従属的姿勢を持ち続ければ、外国人が指摘するように生涯に渡り、付き合える友人はできにくいかもしれませんが、組織に対して独立した個として主体性を持って取り組めば、組織によって自分を変えていくという現象は起きにくいといえます。そうなれば外国人とも長い付き合いができる人間になることもできるのではないでしょうか。

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