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 ロンドンに欧州本社を置く某日系企業の幹部が「一旦、欧州から撤退することも考えている」という話を聞きました。理由は3年以上続く英国の欧州連合(EU)離脱が延期され続けている中、確実に収益が落ちていることと、離脱対策に費やす時間と労力が限界に達しているからだということです。

 たとえば、10月末の離脱をジョンソン英首相が宣言したことで、離脱は今回は確実だろうという前提で、離脱で発生する法的な対策を含め様々な対策について、EUとの離脱合意案を読み込みながら、長いディスカッションと対応マニュアルの作成に多くの時間と人材を割いてきたました。しかし、どうやらそれは無駄になりそうということです。

 このような状況を2016年6月の国民投票以降、何度も繰り返してきたわけで、金融機関の多くは離脱でEU内の金融業務の資格を失うリスクに備え、欧州本社をダブリンやフランクフルト、アムステルダムなどの移す作業をしてきた経緯があります。いわゆる金融ビジネスのEUパスポートの取得問題でも、各企業は多くの時間と労力、費用を費やしてきました。

 しかし、はっきりしないために、全てが無駄になる可能性もあります。つまり、ブレグジットをめぐる迷走は、企業活動には確実にダメージを与えており、それは欧州市場への投資に対する魅力を色あせさせています。政権が変わる度に法律が変わり、独裁者の独断で規制が急に変更されるような途上国でもないEUは、経済活動で信用を失いつつあるといえます。

 今日の時点で10月末日の離脱はなくなったようです。いつも報道は「ようだ」で断言できないのがブレグジット報道です。英語圏メディアの中には、あたかもEUが英国に意地悪をして離脱を引き延ばしているような報道もありますが、フランスやドイツでは、英国の離脱担当の代表団と合意しても、英議会で否決を繰り返されることに眉をひそめている状況です。

 EUにしてみても、英国で合意した内容は加盟27カ国の支持がなければ前には進めず、非常に煩雑な手続きを毎回踏んできたわけです。今はフランスと英国でパーツを作り、ドイツで組み立て、EU域外に輸出するなど、世界中、ビジネス形態のグローバル化は避けられない状況です。人と物の移動の自由を保障してきたEUはその意味では先進的取り組みをしてきたことで投資を呼び込んできました。

 無論、ブレグジットは表向き経済の比重が大きいと見られていますが、あくまで政治的に移民政策や社会政策などを巡り、英国はEUとは相いれない考えの違いがあったことも確かです。長年の不快な思いの積み重ねが英国国民に離脱を決断させたともいえます。

 EUは25日、英国の離脱期日の延期で合意した一方、延期後の新たな期日は示さず、ジョンソン首相が提案した総選挙実施について英議会が討議する時間的な猶予を与えました。フランスのマクロン大統領は、延期の正当な理由と相当な期間を早急に英国が示す必要があるとし「状況を明確化するのは英国で、延長が当然でないことを英国に示す必要がある」と英国に圧力を掛け続ける考えを示しました。

 ここで浮上した総選挙が年内に実施され、仮に離脱派の保守党が支持を得られないとか、保守党と労働党が拮抗する結果になると、さらにブレグジットは迷走する可能性もあります。そうなると欧州経済は疲弊の度を増すリスクもあります。

 そして、日本人には疎い大陸リベラルと英国保守の対立というもう一つの隠された問題は、どうなるのかということです。この期に大陸側が旧態依然とした人道リベラルの考え方を根本から見直さなければ、自滅の道に入る可能性もあり、先行きは依然不透明です。

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