「舞台のバレエ稽古」1874年 メトロポリタン美術館所蔵
フランスの19世紀後半から20世紀初頭を飾るエコール・ド・パリのフランス人画家の中で、最もフランス的なのは誰かといわれれば、私はマティス、セザンヌ、ドガの3人をあげたい。無論、巨匠セザンヌもいれば、ピサロやモネ、ロートレックもいますが、とりわけ描写力で郡を抜くエドガー・ドガの描く踊り子たちは、とてもフランス的です。
教会権力の下では女性が足を挙げて踊るなど考えられなかった中世を抜け出し、バレエはオペラと並び、フランス近代を飾る総合芸術の花でした。そこには音楽があり、ストーリーがあり、舞台美術があり、何といっても踊り子たちの無言で優美でしなやかな肉体表現が観るものを圧倒しました。その究極の美の世界を描き留められるには、天才的描写力が必要でした。
激しく動く踊り子たちの優美な姿が即座に脳裏に記憶され、最も美しい瞬間を絵にしていくのは容易なことではないことは絵を描いたことのある者なら誰でも分かることです。それも扱いが非常に難しいパステルなどを駆使し、舞台や控室、稽古場の熱気溢れる風景を描ききる画家は、そう多くはいません。
印象派を代表するドガにとっての重要なテーマの一つが、パリ・オペラ座。ドガはバレエに魅了され、歌劇場に通いつめたといいます。そのパリ・オペラ座の創設350年を記念して、パリのオルセー美術館では「オペラ座を描くドガ」展(来年1月19日まで)開催されています。
ドガはオペラ座の絢爛豪華なロビー(フォワイエ)から桟敷席、稽古場、舞台をくまなく探索し、踊り子たち、オーケストラの音楽家たち、観客を観察しながら、オペラ座の総合芸術を絵画や彫刻作品として描き続けたのは非常に興味深いと言えます。
本展はオルセー美術館、オランジュリー美術館、ワシントン・ナショナル。ギャラリーの共同企画として開催され、ドガとオペラ座の関係を解き明かしています。350年というには、フランスの王立オペラの歴史が1669年、ルイ14世の時代に始まったためで、ドガの時代のシャルル・ガルニエが設計した現在のオペラ座は1875年に完成しています。
つまり、ドガが41歳の時に完成したのが現在のオペラ座ということで。ドガはそれ以前からバレリーナをモチーフにした作品を多く手がけており、たとえばメトロポリタン美術館が所有すする「舞台のバレエ稽古」は1874年の作品で、今のオペラ座が完成する1年前の作品です。
銀行家の息子として裕福な家庭に生まれ育ったドガは当時、上流階級の社交の場としてのオペラ座の年間で座席を買う定期会員で、バレエの稽古場や楽屋に自由に出入りして、バレリーナたちの練習風景を見ることができたとされています。
父親の逝去で生活が苦しくなったドガは、それでもコンコルド広場近くに住み、オペラ座とは密接な関係を持っていた。ドガが1881年に発表した彫刻「14歳の小さな踊り子」をモチーフにしたバレエ作品を、パリ・オペラ座がドガに敬意を払い、2003年に初演したのは、よく知られる話です。
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父親の逝去で生活が苦しくなったドガは、それでもコンコルド広場近くに住み、オペラ座とは密接な関係を持っていた。ドガが1881年に発表した彫刻「14歳の小さな踊り子」をモチーフにしたバレエ作品を、パリ・オペラ座がドガに敬意を払い、2003年に初演したのは、よく知られる話です。
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