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 日本企業が弱体化しているからとは簡単にはいえませんが、国境を越えたM&Aや資本提携で自分の国の常識が、新しく持ち込まれた外国企業のやり方でギクシャクするケースは少なからずあります。特に支配するか、されるかの歴史が長く、なおかつ独善性が強い国の企業ほど、異文化に妥協しない側面もあります。

 私は日産自動車がフランスのルノーと資本提携したことで必要となった異文化理解、グローバルマネジメントについて10年以上、マネジメントクラスから生産ラインで働く従業員までを対象に研修を担当させてもらいました。

 1年前に逮捕され、起訴された同社にルノーから送り込まれたゴーン元会長の評価は今では地に落ちていますが、実は多文化の中で育ったゴーン氏だからこそうまくいった面もあったと私は今でも考えています。

 日産とルノーが資本提携する前に、あるプロジェクトでフランスのホテルチェーン、アコーホテルズと関係する仕事をした経験があります。世界90か国以上で3,500軒以上のホテルを有する巨大企業ですが、彼らのグローバル展開は興味深いものでした。

 グローバル展開して成功する企業は、一般的にローカリゼーションに対しての認識を持っています。たとえば、20年以上前、アコーのアジア・オセアニア地域を統括するタイ・バンコックの責任者が「重要な決定をする時、もちろん、パリにある本社と協議するが、私がいいといえば本社は私の判断をほとんどの場合、支持します」とオーストラリア人の責任者は私にいっていました。

 企業買収などで日本に進出する欧米グローバル企業が、一方的に自分たちのやり方を押しつけたのは過去の話です。たとえばゴーン氏は「自動車産業はその国に根ざしたマネジメントができなければ成功しない」といっていました。無論、再建屋の異名を持つゴーン氏は2万人の解雇という手荒なこともしましたが、一方で工場やディーラーを周り、従業員の声に耳を傾けていました。

 彼自身がブラジルのレバノン社会で生まれ、レバノン、フランスで教育を受けたグローバルな人間だったことで、単純にフランス的やり方に固守したわけでなかったことで、巨額の負債を抱えた日産の再建はできたともいえます。無論、意思決定やマネジメント改革も行われ、それが功を奏した最初の10年と逆にゴーン氏を裸の王様にした後半の10年があったともいえます。

 それはともかく、あなたの会社が外国企業に買収されたり、資本提携した場合、どんな人間がが指揮を取るかが最重要であることはいうまでもありませんが、受ける側も知っておくべきことは少なくないといえます。特にハイコンテクストの日本人は異文化受容がけっして容易ではないからです。

 多くの国では、異なった宗教や人種が混在して、常識の共有度は高いとはいえません。小さい時から近所やクラスメートに多様な文化が存在していれば、異文化に対する耐性もありますが、日本人にはありません。関西の人が関東の人に違和感を感じるくらい、大した違いのない日本人同士でさえ理解し合えないわけですから、国を超えた異文化耐性はありません。

 そこで私は国内外で外国企業と協業する状況にどう対処するかという研修で、異文化をどう感じ、どう対処するかについて研修前に「文化の異なる人たちと協業するための適応力診断票」アンケートを実施しています。その1部を紹介すると、

<異文化理解>
自分とは異なる文化を持つ人との協業で:「どんな感情を持ち、どう対処しますか」
質問:一方的に見えるトップダウンのリーダーに対して
〇どう感じるか
(納得できず危険だと感じる それもありだと思う)
〇どう対処するか
a、1人での決定はリスクがあるので意思決定の仕方を改めてもらうように要求する。
b、コンセンサス重視の日本の意思決定スタイルを丁寧に説明し、理解を求め、調整してもらう。
c、多くの日本企業が日本のやり方で結果を出してきた過去を示し、変更してもらう。

<異文化間コミュニケーション>
〇ビジネスの現場
1、上司、先輩と積極的にかかわらない。          はい いいえ
2、自分の持っている情報を他者と共有しない。       はい いいえ
3、会議の場で反対意見を言われたら、できるだけ反論しない。はい いいえ
〇プライベート
1、私的な場では、あまり議論しない。           はい いいえ
2、どうせ言っても無駄だとあきらめてしまう。       はい いいえ
3、家族や友人が自分の気持ちを悟ってくれないと苛立つ。  はい いいえ

<不確実なことへの免疫>
あなたは以下の状況に、どんな感情を抱きますか。
質問:いつも決まった時間に決まった交通手段で通勤しているのに交通ダイヤが乱れてしまった。
(a、いらいらして怒りを感じる b、強い不安を感じる c、なんとかなると非日常を楽しむ)

 日本人は異文化を頭で捉えようとして知識で乗り切ろうとする傾向が強いのですが、実は異文化対応力は自分自身の問題だということです。特に日本人にしか通じない村社会の常識を異文化の相手に強要したり、その村社会の自覚もない場合に多くの衝突や摩擦が起きてしまいます。

 日本的なやり方が、うまく機能することを伝えたければ、相手が理解できるように客観性を持って丁寧に説明する必要があります。つまり自分たちを知ってもらう努力が必要です。同時に生産性を高めるための方法については、しっかり議論し、ベターなものを受け入れる謙虚さも必要です。

 日本には上に対する忖度、斟酌し、服従して従う文化があります。お上は絶対的だから、自分が違うと思ってもいってはいけないというものです。これではストレスをためるだけで信頼関係は築けません。トップダウンでも議論し、いうべきことをいったうえで決定には完全に従う姿勢が重要です。

 カルチャーダイバーシティは避けては通れない世界的運命です。その一歩踏み出すことは明日を生きていくためには大いに有用です。ポジティブに捉えれば自分のスキルアップ、キャリアアップに繋がるものです。

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