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 誰もが新型コロナウイルスの流行を抑え込むワクチンが普及するであろう来年春以降、世界は徐々に元に戻ることを期待しているでしょう。Withコロナのポストコロナ時代は元の世界とは違うといわれても、何がどう違うのか明確に予想するものはありません。

 たとえば、次期アメリカ大統領になるといわれるバイデン氏が明らかにした経済政策分野の顧問らの顔ぶれは、オバマ政権時代のベテランたちです。弱者の見方を辞任する民主党はコロナ禍で急増する失業者を救うべく、支出拡大・規制強化・増税・金融緩和を信奉する経済専門家を登用するつもりです。

 ウォールストリートジャーナル(WSJ)は、アメリカの今は、オバマ政権時代が直面していた状況とは大きく異なっており、経済活動に政府が介入する「大きな政府」をめざすケインズ理論信奉者を連れてきてもうまくいかないリスクがあると指摘しています。理由の一つは今回の大量失業はコロナ禍がもたらした経済理論の前提にはない状況だからです。

 この状況をどちらかというと新自由主義に近いトランプ政権の4年間を否定するために、古い、しかもオバマ政権でけっして成果を出せなかったケインズ派を投入しても問題解決にはならない可能性が高いという見方も既に出ているということです。

 コロナさえなければ、トランプ氏の再選は容易だったというのが一般的見方で、理由は経済が悪くなかったからでした。仮にトランプ氏の経済政策が深刻な間違いだったなら、バイデン政権はその否定で出発するには当然ですが、そういう前提はないわけです。

 WSJは社説で「現状は2009年(オバマ政権時代)ではない。新型コロナウイルスのワクチンがいったん広範囲に供給されれば、経済は急拡大するはずだ。オバマ政権時にいた経済政策担当者らの仕事は、この成長を維持することであり、前回の政権時に、過去何十年かで最低の景気回復ペースをもたらしたのと同じポリシーミックスによって成長を台無しにしないことだ」と指摘しています。

 それはともかく、コロナ禍が世界にもたらした影響は圧倒的で、たとえば人の移動の制限は自動車業界、航空業界に深刻なダメージを与えました。何年もかけてキャリアを磨いてきた技術者やパイロット、CAたちは職業替えを迫られており、勝ち組と負け組が鮮明になっています。

 製造業はサプライチェーンの再構築を迫られ、グローバル化そのものが、国益最優先のトランプ政権の登場で減速したかのように見える中、コロナはそれにトドメを刺すような事態です。とはいえ国境を超えた経済活動は必須で、ひとついいことがあるとすれば、グローバル化に忍び寄った悪意や幻想から目が覚めたことでしょう。

 経済を利用して覇権を狙う勢力、長年莫大な投資をして生まれた高度な技術を不当な方法で盗み取る勢力、経済がまるで政治外交問題まで解決してくれるという幻想は消えました。今はグローバリゼーションに入り込んだウイルスを除去することの重要性に気づき始めています。

 そう考えると、ポストコロナ時代に求められるグローバルプレーヤーは、そのウイルスに敏感であるだけでなく、それを排除するスキルも必要です。つまり、グローバルリスクマネジメント、グローバルクライシスマネジメントのスキルが今まで以上に重要ということです。

 それもコロナウイルスの感染拡大をワクチンでくい止めるのと同様、ネガティブなウイルスを拡散させないシステムを構築する必要があります。ウイルスは変化し、正体を変える性質があるので、常に監視し、潰していくことも重要です。

 それに八方美人的商人根性ではビジネスは成功しない時代です。明確なアイデンティティとヴィジョンが必要です。さらに危機を乗り越えるには国境を超えたパートナーとの信頼関係の構築は必須です。

 グローバルな不確かさが増す世界だからこそ、未来を見通す能力も必要です。そのためには近視眼的であってはならないということです。そして希望を失いやすい時代だからこそ、輝きを持ち、勇気とやる気を与えてくれるリーダーシップを発揮する人間が求められているといえます。

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