Moon_Jae-in

 ポストコロナの世界は権威主義国家と民主主義国家の戦いが本格化するといわれています。権威主義国家とは中国、ロシア、北朝鮮、イランなど政治システムの独裁性が強い国のことです。政治権力で国民の自由を抑圧し、同時に覇権志向が強いことも共通しています。

 その対極にあるのが、思想・信条の自由、言論の自由、選択の自由、信教の自由を掲げる民主主義を国家ですが、今は国民の行動を統制しにくいシステムのためにコロナ禍で苦戦中です。しかし、この陣営の中には民主主義の成熟度には大きな差があります。その一つが韓国です。

 文政権の疑惑捜査を進める尹錫悦検事総長に対する秋美愛法相による懲戒申請を受け、法務省の懲戒委員会が16日に尹氏の停職2カ月を決定、その秋氏が同日、文在寅大統領に辞意を表明し、喧嘩両成敗などといわれています。

 検察改革を強力に推し進めてきた文在寅政権は、自らの政権の汚職捜査を行い、検察改革に抵抗する尹錫悦検事総長の追い落としが急務とされていましたが、それを自らのミッションと忖度し、尹錫悦検事総長を辞任に追い込もうとした秋美愛法相も辞任に追い込まれた形です。

 絶対権力者である文在寅大統領の傷を最小限に抑え、秋美愛法相が引責辞任するというパターンは韓国ではよく見られるパターンで、古くは李氏朝鮮王朝時代の王と忠実な家臣との関係や韓国ドラマで大企業内部の権力闘争にも見られる文脈のようにも見えます。

 そもそも独立を宣布し、軍事政権から民主主義国家に移行してきた韓国を見ると、それは激しい権力闘争の歴史でもあったといえます。現在政権を掌握している文在寅氏とその仲間たちは1970年代の左翼運動で検察によって逮捕され、弾圧された人達です。

 権威主義の国では、政府の権力行使に欠かせないのが軍と警察、司法です。今、香港では中国共産党が採択し、適応している国内治安維持法に従って、香港検察が次々と民主化の活動家を逮捕し、裁判にかけ、刑務所に入れようとしています。刑務所内では思想矯正が行われることでしょう。

 今の文在寅氏を筆頭とする左翼勢力は長年、検察に苦しめられ、恨みつらみが鬱積しているということは確かです。検察の権力を弱体化させる検察改革は、彼らにとって当然の流れといえます。実際、韓国の検察権力は絶大で、政治家も大企業経営者も震え上がる存在といわれているようです。

 しかし、もともと国家権力に寄り添ってきた検察は、元来は国家権力の手先であり、権力と結びついて反権力者を弾圧してきた歴史があるのに、検察改革といいながら、今回の尹検事総長の懲戒委員会メンバーが文在寅派で埋め尽くされているのは矛盾しています。

 反権力勢力だった左派にとっての最大の敵は保守勢力であって、検察ではなかったはずです。文在寅氏は最強の国家権力で検察を支配しようとしているという点で、過去の軍事政権と発想は同じです。左派の傾向として、権力=悪といいながら、政権をとれが保守派以上に権力行使する矛盾を抱えています。

 もう一つ韓国の検察権力が強大化したのは、政治の未熟さと私は見ています。よくある途上国でのクーデターは軍が主導するケースが多いわけですが、政治権力者の横暴を戒めるのに、本来、国家秩序を保つため、政府に忠実でないといけない軍や警察が反権力の側に立つという現象です。

 国民が納得する政治を行うことは、民主主義国家だけでなく独裁国家でも重要です。司法が過度な権力を持つということは、政府による統治がうまくいっていないことによって起きるのが常です。その司法も世論に左右され、例えば朴槿恵前大統領の偏った利益誘導に怒った国民感情が検察に大きな影響を与えたことは否定できません。

 民主主義の基本は三権分立ですが、政府側の法相と政府から独立した検察のトップの関係は、どこの国でも微妙です。いずれにせよ、三権分立は民主主義の中で権力暴走させない知恵として存在しており、韓国では、それが機能せず、権力者が司法を支配しようという姿勢が露骨です。

 しかし、結果的に文在寅大統領の息のかかった懲戒委員会は過去に前例のない2か月停職を尹検事総長に命じた一方、辞任に追い込めなかったのは、支持率低下が止まらない文在寅氏が、尹氏を支持する世論が予想以上に大きいことに配慮したとも指摘されています。

 韓国の最大の問題は、権威主義が民主主義の成熟を妨げていることだと私は見ています。とにかく地位を得て主導権を握った者が、思い通りに事を動かせるという考えが頭にこびり付いていることです。韓国では権利、権力には重い責任が伴うという意識は希薄です。

 そんな韓国で、反米、反日、忠中、忠北を掲げる文在寅左派政権は、結果的にすべての国から冷たい目で見られ、孤立化を深めています。コロナ禍で経済がひっ迫する中、2019年に韓国から撤退した外国企業の数が前の年のおよそ3倍の173社に上り、今年はコロナ禍で撤退が加速しています。

 小国の韓国は大国との付き合いで成長してきた国です。超内向きの文在寅政権の政策は機能不全に陥り、国内でも、もともと反大企業の左派政権は韓国財閥との関係はよくありません。今回の1連の検察改革をめぐる騒動で、韓国が民主主義の成熟に次の一歩を踏み出すことを祈るばかりです。

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