世界最大規模のパリのルーヴル美術館は、年間来館者数でも世界一で1,000万人を超えています。来館者の多さから、美術館職員が何度もストライキを行い、2年前の黄色いベスト運動にも参加して、外国からはるばる訪れた観光客が美術館に入れないなどという事態になりました。
しかし、今年はコロナ禍で何度も閉館し、世界中から来る外国人観光客も来れない状況の中、来館者は激減しました。そのため巨大美術館は静けさを取り戻し、鑑賞者を失った名品が来館者を待ちわびる状況です。
今もコロナ対策で閉館中のルーブルですが、12月に入り、オークションハウスのクリスティーズとドゥルオーの協力を得て、異例のオンラインオークションを行いました。目的は2021年秋にオープン予定の芸術および文化教育に特化したスペースを新設するプロジェクトの資金調達のためです。
期間は12月１日から15日で「ルーヴルへの入札」と題されたメセナの特別なオークションでした。オンラインのオークション自体はクリスティーズのデジタルプラットフォームで開催されました。
出品作品もルーヴルで個展を開催したことのある世界で活躍する現役作家です。パリ地下鉄エントランスのデザインを100年前に担当したアール・ヌーヴォーの巨匠エクトール・ギマールに代わり、100後に担当したフランス人のジャン・ミシェル・オトニエル（今秋、東京でも個展開催）や、劇場や図書館などの室内を撮るドイツ人写真家のカンディダ・ヘーファー、昨年、100歳でルーヴルで回顧展を開いたフランス人作家、ピエール・スーラージュなど24人の現代美術作家たちの作品です。
出品物は芸術作品だけではなく、高級宝飾メーカーの１点物の芸術的宝飾品、ルーヴル美術館の国王のレセプションの間でのプライベートコンサートのチケット、同館館長自らが館内を案内するツアー券、一般の来館者がアクセスできないルーヴルの公開されていない宮殿奥深くの内覧権限や、ダヴィンチの「モナリザ」の年次検査に立ち会う特権（1000万円）など特別体験も盛りだくさんなオークション企画です。
同美術館のマルティネス館長は「ルーヴルと縁のある作家やオークションハウスは、私たちの呼びかけに即座に応えてくれた。彼らは、教育的、社会的プロジェクトがルーヴルの活動のコアであることを理解してくれている。社会的弱者に属する人々がパンデミックの被害者になっている今、その必要性はさらに高まっている」と述べています。
同館長によれば、ルーヴルが計画する文化芸術の教育プログラムのために設置される1,150�屬離好據璽垢砲蓮⊂祿下圓簓郎ぜ圓覆票匆馘�弱者を優先的に迎え入れ、芸術体験の場、芸術を介した人間交流の場にしたいとしています。
クリスティーズ・フランスのトップ、ヴェルディエ氏は「文化機関がコロナ禍で困難に直面していることは誰でも知っている。ルーヴルも例外ではないので、美術館を支援するのは当然のこと」「今回のオークションの収益が、美術館にとって未経験の分野に踏み出す助けになることは、この困難な時期にさらに意味を持つ」と述べています。
オークションの収益額は2,365,000ユーロ（約3億円）だったそうです。最も高額で落札されたのはスーラージの1962年の作品で1,400,000ユーロ（1億7,700万円）でした。
ルーヴル美術館はその公共性、公益性を強く意識し、新型コロナで困難に直面したことが思わぬアイディアを生み出したといえます。
フランスはコロナ禍を抑え込めていないことから、外出禁止措置の緩和が限定的で、今度は夜8時以降、翌朝６時まで夜間外出措置が施行されたばかり。今月15日に再開館予定だった美術館、博物館は、少なくとも2021年1月7日まで閉館のままになりました。
それでもシャンゼリゼ通りのイルミネーションや、百貨店のギャルリー・ラファイエットやプランタンの歩道に面したショーウインドーは、凝った仕掛けで動く人形たちで賑やかです。パリの建物は美しい照明で飾り付けられ、文化芸術が生活の1部となっているフランスでは、美術館は閉館していても生活空間に芸術が自然に溶け込んでいるという感じです。
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