欧州連合(EU)欧州委員会は21日、欧米自動車大手フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)とフランス大手グループPSA(旧プジョー・シトロエン・グループ)の経営統合計画を条件付きで承認しました。コロナ禍の2020年最大規模の自動車業界案件でした。
持株会社ステランティスの380億米ドル規模の統合計画にEUはゴーサインを出したことで、欧州第2位、世界第4位の新自動車グループ企業が誕生し、仏ルノーは後塵を拝すことになりました。
1月末に統合計画についての株主による投票が統合計画の承認が予定されており、欧州市場で販売される乗用車のほぼ2台に1台はステランティスとトップシェアのフォルクスワーゲングループの自動車になり、欧州自動車業界は様変わりします。
コロナ禍のビジネスの苦戦で暗いニュースに彩られた2020年でしたが、次期ステランティス会長のジョン・エルカーンFCA及びフェラーリ会長にとってはクリスマス前に飛び込んだ超ポジティブなニュースでした。
欧州委員会のマルグレーテ・ベスタガー副委員長はプレスリリースで「フィアットクライスラーとプジョーSAの合併は、小型商用バン市場への参入と拡大を促進することを約束しているため、承認できる」と述べました。承認の条件は商用バンに関連して、PSAは日本のトヨタとの合弁事業での生産を増強し、バンをほぼ低コストで販売することを提案することでこれに対処しました。
トヨタ自動車とPSAは、欧州での小型商用車のOEM供給や、2002年に設立した小型車生産の合弁会社トヨタ・プジョー・シトロエン・オートモビル・チェコ(TPCA)の運営において、新たな協力関係を構築し、欧州トヨタ(TME)とPSAは、2012年より、欧州にて小型商用車の分野でも協力してきました。
そのTPCAについて、PSAが保有するTPCA全株式をTMEが取得し、2021年1月からTPCAはTMEの完全子会社になるという流れです。そのため今回のPSAとFCAの統合はトヨタにも関係のある話です。
結果的に、フォルクスワーゲングループ、トヨタ、そして経営的に混乱と苦戦が続くルノー・日産アライアンスに次ぐ世界第4位の自動車グループが誕生し、米フォードとGMを超える存在になりました。
プジョー、シトロエン、オペル、DSモデルを生産するPSAは、すでにCO2目標を大幅にクリアしているため、EV車のテスラの脅威に晒されるFCAにとっては朗報です。
今回の統合計画は、最初はエルカーン氏が仏政府が筆頭株主のルノーに話を持ち掛け、仏政府の動きの遅さを敏感に感じ取ったエルカン氏が、政治的影響のないPSAに交渉を乗り換えた経緯があります。
フランス政府は、ルノーについては失業問題に注意が行きすぎ、統合による工場閉鎖や大量人員整理を懸念しました。FCAとPSAの統合計画では、すべての工場プラットフォームを維持しながら、年間60億ドルの運用コスト削減を実現できるとしています。
今回のニュースは、ルノーにとってはいい話とはいえません。100年に一度の業態革命に晒される自動車業界はEV化とネットなどデジタル化への切り替えで、莫大な資金を必要としています。その意味でも自動車業界の再編は不可避ですが、フィアット創業家アニエッリ家の一員である若き経営者エルカーン氏の手腕が問われるところです。
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