pxfuel.com

 今、世界はアメリカのトランプ政権の最終章のドラマを固唾を飲んで見守っている状況です。毎日、新しいことが起き、世界情勢を左右する超大国アメリカの動向に一喜一憂し、あることないことが発信される真偽が確認できないSNS上の情報から、大手メディアからまで連日行き交っています。

 同時にこの自由と民主主義、法治国家の価値観を持つ大国の大混乱をよそに、権威主義の21世紀型社会主義を標榜する中国は、香港や新疆ウイグル族への弾圧を強め、国家安全維持法を根拠に香港だけでなく、世界中の中国共産党の強権に反対する民主化勢力の一掃のため検挙する構えです。

 対中国強硬路線のトランプ氏のSNSのアカウントが、連邦議事堂乱入事件で永久閉鎖されたのを最も喜んでいるには、たぶん中国でしょう。

 しかし、そもそもこの米中対立や米国内の世論分断を加速させた原因は、既存の大手メディアへの信頼が落ちたことで、何の客観的証拠もなく垂れ流されるSNSの感情に訴える陰謀論や言説が世論をミスリードしている現状があることです。

 信頼を失っている多くの既存メディアは、SNSの台頭の台頭のせいにしていますが、実はSNSの普及以前から、民主主義を支える重要な使命を負うジャーナリズムは商業主義と折り合いをつけるために長い葛藤を繰り返してきました。

 1980年代後半、日本では写真週刊誌の競争が過熱化し、部数を稼げる超有名人のスキャンダル報道がエスカレートし、お笑い芸人のビートたけし率いる軍団が講談社の写真週刊誌フライデー編集部を襲撃する事件が発生しました。その後、マスコミ倫理懇談会などが開催され、メディアの社会的責任と商業主義が話題になりました。

 アメリカでは、民主主義を守る公器としてのメディアは、最初から客観報道というより、政治的信念を表明することが社会的に認められる中、商業的成功を収めるのは、反権力、弱者の味方を表明するヒューマニズムのリベラル系メディアが商業的成功も収めています。

 反トランプ報道の急先鋒のCNNは、トランプ政権誕生以来、どちらかと言えば海外で視聴率を稼いでいたのが米国内で反トランプ報道を見たい視聴者が急増し、莫大な利益を得ました。

 知人だったパリ在住のヘラルド・トリビューン(現インターナショナル・ニューヨーク・タイムズ)のコラムニストの故ファフ氏は「アメリカ人は外国にまったく関心はないので、国際報道中心のCNNやも私の書く国際メディアにも関心はない」といっていました。

 その状況を一変させたのは9・11同時多発テロで、国外勢力からアメリカ本土が攻撃を受けたことでした。もともとリベラル路線のCNNは、4年前クリントン候補を支持するあまり、クリントン・ニュース・ネットワーク(CNN)などと揶揄され、その後も反トランプキャンペーン継続で利益を得ました。

 大衆文化が特徴のアメリカでは、大衆受けはすべてのビジネスで重要です。メディアも視聴率や購読者数が重視され、他の民主主義国家より、メディアも商業主義と最初から深く結びついています。そこで常に問題になるのが中立性、客観性といったメディアに欠かせない要素とともに良識、公正さ、正義といった民主主義を支える価値観と商業主義の折り合いです。

 ネット時代で無料でニュースを入手できるようになり、SNS上でなんでもシェアする時代になったことで、収益面で危機に立たされた既存メディアは、商業主義を強化せざるを得なくなり、良識、公正さ、正義より収益を上げられる言論の展開にシフトしているのが今の現状だと思います。

 ネット普及で収益が激減したメディアは、本来主流だった費用の掛かる調査報道を以前よりしなくなり、ネット上に流れる情報の2番煎じのようなニュースを垂れ流し、同じような報道が急増しています。

 それにCNNが4年前の大統領選でクリントン候補に当確を出し、予想を外したようなことが大手メディアで多発し、多くの人々は既存メディアよりSNS上で自分と似た考えの人のブログなどを読むようになり、メディアの信頼性は地に落ち、そのメディアはSNSを見ながら報道するようになりました。

 それに情報収集は、その情報を必要とする主体が自ら収集しなければその主体に有益な情報は得られません。東日本大震災の時にフランスで日本のNHKのニュースを流していましたが、それではフランス人が知りたい情報にはなっていません。ましてやネット上に行き交う情報のコピーアンドぺーストではいい加減な情報しか得られていません。

 そうなると証拠もない陰謀説やフェイクニュースが氾濫し、ますます、世論は迷走し、その隙をついて世論誘導を画策する権威主義国がSNS上で言論操作を行う行為も急増させてしまいます。

 このままではうつろいやすい感情に左右されるポピュリズムはさらに台頭する状況です。今はジャ−ナリスムが信頼を取り戻すのが急務で、SNSに左右されることなく、裏どりし確たる証拠を示し、客観性を確保しながら、正義や良識を守ることが急務と思われます。

ブログ内関連記事
超マイノリティに振り回される世界 事実を無視した刺激的偏向報道が分断を煽っている
コロナ禍の濃霧で強権待望 ポピュリズムより民主主義を支える教養と良識を育てるべきでは
民主主義を脅かすメディアの欺瞞 共感の時代といいながら議論を封殺するメディアこそ問題
政治とジャーナリズムの劣化が民主主義を機能不全に陥れている