アメリカ商務省が28日に発表した2020年の実質GDP(国内総生産)速報値は、前年比3.5%減と、リーマン・ショック後の09年(2.5%)以来11年ぶりのマイナス成長でした。第2次大戦直後の1946年(11.6%)以来74年ぶりの落ち込み幅ということで、コロナ禍のインパクトを見せつけた形です。
当然ともいえますが、アメリカ経済の約70%を占める個人消費が前年比3.9減と大幅マイナスだったことは、健康不安、経済不安、政治不安の中では想像に難くありません。企業は設備投資を躊躇し、景気後退に耐えられない企業倒産も相次ぎ、観光業、レストラン業などのサービス業、それに関連する企業の苦戦は顕著でした。
一方、アップルやフェイスブックなどがコロナ禍が追い風となり、業績を伸ばしました。日本でもデジタル化に関連する企業が高い利益を上げ、人手不足になっていることは、社会がコロナ禍にも耐えられる体制を整える方向に動いている表れですが、不透明感が取り除かれたわけではありません。
国際通貨基金(IMF)が26日に発表した今年の経済成長見通しでは、世界全体してはプラス5.5%となるとし、先進国ではアメリカはプラス5.1%、ユーロ圏はプラス4.2%、日本はプラス3.1%と、いずれも、去年のマイナス成長からプラスに転じる見通しとなっています。
コロナ禍の抑制の切り札とされるワクチン接種が始まったことや、アメリカのバイデン政権の大型財政出動などが背景にあるとされています。
昨年5月、まだ、コロナ禍の長期化が予想されていない段階で、米ウォールストリートジャーナル(WSJ)は、コロナ禍終息後の景気回復はV字ではなく、スポーツ関連商品を扱うナイキのロゴのような「大幅な落ち込みに続く、痛ましいほど遅々とした回復」のスウィッシュ型になるかもしれないと予想していました。
どうやら、その予想は当たっているかもしれませんが、当然、IMFの調査検証に含まれていたはずの中国経済の昨年の回復ぶりの読みは、いつものことながら正確な報告がされていないために経済成長の見通しを曖昧化しています。
それはともかく、世界最大の犠牲者を出しているコロナ禍と過去にない社会的分断に傷ついたアメリカが、このまま沈んでしまう可能性が低いことをIMFの予想は示しています。
アメリカの強みは、たゆまぬ技術革新をもたらすイノベーション力にあるといわれますが、そのイノベーションを支えるのは、アメリカが死守してきた自由と公正さの価値観です。コロナ禍はその個人の自由な選択の権利が逆効果になり、政府の方針に従わない多くの人々が感染拡大をもたらしました。
しかし、コロナ禍で自由主義の価値観を捨て、中露のような強権独裁に移行する可能性はゼロでしょう。自由というと日本では勝手気ままを想像する人もいますが、その自由は権力の拘束からの自由であり、宗教的には精神の自由を意味しています。ついでに言うなら、人間にとって最も崇高な営みである創造性は自由の保障なしには生まれません。
しかし、その自由だけを強調すれば、勝ち組と負け組ができ、もう一つの大切にしている価値観である平等が保障されなくなるため、公正さが自由と並ぶ価値観とされています。
30年前、フランスに引っ越した時、フランス人妻の親せきから「あなたは極右のルペン党首と食事をしたことがあるというから、彼に頼めばいい仕事が得られると思う」といわれました。フランスにもいわゆるコネという考えがあることを発見しました。
コネは公平性の真逆の考えです。例えば、自分の親族の一人が大統領や大会社の社長など権力者になれば、全親族が恩恵を受けるという考えが韓国や中国にはあります。東南アジア全域にもあります。それが貧富の差に繋がり、才能や実力のある若者の芽を摘んでいるともいえます。
アメリカが自由と公正さを大切にしているといっても、それが実現しているかどうか別の問題です。目を離せば、いつでも不公正なことは起きるからです。しかし、保障されている自由と公正さを根拠に戦うことができるところが大きなことです。黒人奴隷解放もその価値観がなければ実現できなかったでしょう。
誰にでもチャンスがあり、何度でもチャレンジができるというところが社会の活力になっているところがアメリカに強みです。それに憧れて死を覚悟してまでアメリカに移民しようとするわけです。コロナ禍で傷ついたアメリカが、助け合う精神を復活させ、自由と公正さによって復活することを密かに期待しています。
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