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 東京五輪・パラリンピック組織委員会の森会長の「女性がいる会議は長引く」発言が国際的批判を浴びています。ジェンダーを含め、異なる文化の共存を目指すダイバーシティは、大きなパワーを産むというポジティブな側面だけが注目されがちですが、実はしっかりとした理念が必要です。

 ダイバーシティは、現実には解決すべき問題が次々に噴出し、たとえばアメリカは人種のダイバーシティの理想の先頭を走っていますが、いまだに黒人差別と闘っています。つまり、平等と人権という理念がなければ挫折する可能性があるということです。

 ジェンダー問題でも、進んでいるといわれる欧米諸国でセクハラは消えず、いまだに隠れたところで陰湿なセクハラ被害を受ける女性は減っていないし、欧米でも男女の給与格差は解消されていません。米ハリウッドで露呈した女優たちのセクハラ被害から始まった#Me Too運動も、地味な長期戦です。

 その意味でダイバーシティは理想であり、目標でしかなく、現実を変えるための多大なエネルギーと時間が必要です。最大の敵は差別を問題と感じないことです。森会長の世代の保守の政治家の多くは、妻は3歩下がって黙って夫を支えるのが当然として暮らしてきたはずです。

 少子化対策が日本で進まない原因の一つは、影響力の強い自民党の古株議員の多くが「女は社会に出るのではなく、家で子供を産み育てるべきだ」という考えが強いからだといわれています。裏を返せば、少子化は女性の社会進出がもたらしたものなので、家に帰せばいいという考え方です。

 無論、幼児の子育てに母親が必要なのは事実ですが、働き方に柔軟性を与えることや育児体制を整備することで解決できることは多くあります。オランダモデルのように週20時間しか働かない女性管理職がいるといった工夫が必要でしょう。

 森会長は、スポーツ界のドンですが「文部科学省は職員に女性を増やせとうるさい」と言っていたそうです。その発言から見えるのは、そもそも男性中心の現状に問題も限界も感じていないということです。この文化を変えるのは容易なことでないのも事実です。

 世界に散在する国際比較の様々なデータが、日本の男女不平等を指摘しています。私は日本企業の海外駐在員などの研修を長年行い、その受講者の9割が男性でした。今は金融やIT関連を中心に女性も増えてはいますが、まだ、始まったばかりです。

 一方、私が教鞭をとったフランスのビジネススクールの学生も教員も男女比はほぼ同数で、学生の中には子供がいてベビーカーを学内で押す女学生もいました。アメリカやヨーロッパでのビジネス交渉やジャーナリストしての取材を始めた30年前、相手が女性という場合は少なくありませんでした。

 女性の社会での活躍は先進国に限ったことではありません。中国やベトナムでも日本よりはるかに女性が活躍しています。タイでは男性よりも女性の方が労働の質が高いとして日系企業はたくさんの女性を雇用しています。その意味でも日本は女性が活躍できない後進国ともいえるでしょう。

 森会長の意識を変えるのは不可能と思われますが、他の東京五輪・パラリンピック組織委員会の理事会委員たちはどうなのでしょうか。ダイバーシティはオリンピックのコアバリュです。さらにスポーツ界に蔓延する男女差別やパワハラ問題も放置できない問題です。特に男性の意識が変わらなければ、結婚しない女性は増える一方です。

 私個人は男性は女性、女性は男性を幸せにできて初めて一人前の人間と考えています。森会長は「女性は競争心が強い」といいましたが、それは競争する中身が違うだけで、女性から見れば、男性の方がメンツや上下関係にこだわり、競争心が強いといえるでしょう。女性が分かっていない証拠です。

 ダイバーシティはジェンダーだけではありません。今、日本でも外国人労働者が増えており、カルチャーダイバーシティが課題になっています。

 厚生労働省の最新の発表によれば、日本で働く外国人労働者は去年10月の時点で過去最多の172万人余りに上りました。興味見深いのは国籍別で初めてベトナムが中国を抜き、最多の44万3998人だったことです。2位は中国で41万9431人、3位はフィリピンの18万4750人でした。

 前年同期比でも4%増でしたが、新型コロナウイルスの影響を受け、増加率は13.6%で前年に比べ、9.6ポイント減少したとしています。無論、厚生労働省に届け出た数字なので、実際には不法就労者を入れればさらに多いのでしょうが、コロナ禍でも過去最高を記録したことは注目に値することです。

 コロナ禍で働き方そのものが大きく変わろうとする中、日本でもカルチャーダイバーシティが進んでいる実態が明らかになりました。これは民族的、文化的に大きな違いのない人間が集まって生活が営まれてきた日本人にとっては大きな課題です。

 ダイバーシティマネジメントの基本は、しっかりとした共有できる理念を持ち、常に課題を見つけ、執念をもって解決に取り組むことです。それを実行し続ければ、違いを乗り越え、ポジティブな結果を得られるでしょう。これは私のような国際結婚している者にとっては実体験としていえることです。

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