USA vs China

 アメリカのバイデン新政権は、香港や台湾、新疆ウイグル自治区の人権弾圧に対しては、トランプ前政権を受け継ぎ、厳しい対応を取ると予想されています。事実、初のバイデン・習近平による電話首脳会談では、バイデン氏は中国の人権問題で懸念を示し、習近平氏は「内政干渉」といつものコメントで抵抗しました。

 しかし、どこの国とも是々非々の外交をめざす多国間主義のバイデン政権は、譲れない人権問題とは別に、トランプ政権が中国覇権主義に戦略である米国内で言論操作を行い、高度な技術を盗み出し、安全保障も脅かし、途上国を債務の罠に掛け、一帯一路で経済支配しようというもくろみを見抜き、徹底抗戦に出たのとは違う姿勢を見せています。

 それが環境政策です。中国共産党の本質は、言うこととやることは違うということです。トランプ政権はリベラル派が主導した観念的で実現不可能な温室効果ガスの削減で合意したパリ協定の偽善を見抜き、脱退を表明したのとは異なり、パリ協定推進の中国と目標を共有できるとしています。

 温室効果ガスの排出量で世界第1位と2位の中国とアメリカが協力するというのは耳障りのいい話ですが、まさにトランプ前政権のアメリカ保護主義を批判し、自由貿易主義のけん引役のようなふりをして覇権を強める中国に振り回されるのと同様、バイデン政権は環境政策で中国の術中にハマる可能性は大きいと思われます。

 2018〜19年に米大統領補佐官(国家安全保障担当)を務めたジョン・ボルトン氏は、気候変動外交を優先させることで、より重要な問題を犠牲にする可能性について、米ウォールストリートジャーナルに寄稿しています。

 「善かれあしかれ、ドナルド・トランプ前大統領の下では、気候変動問題は中国との交渉の優先リストに入っていなかった。しかしバイデン氏にとって気候変動は、最重要課題だ」とした上で、バイデン政権が気候変動問題で結果を出すためにアメリカは中国に対して「頼む側」に立つことの危険性を指摘しています。

 この問題を仕切るジョン・ケリー(元米国務長官)は、気候外交は他のいかなる外交とも切り離されるもので、外交の交渉材料には一切使わないと言明しました。それは気候外交で頼む側に立つ中国がバイデン政権に対して、頼みを聞く代わりに米中貿易対立で妥協を迫ることはないという意味にも取れますが、実はすでに中国にすり寄る姿勢を見せています。

 たとえば、昨年まではアメリカで中国政府の出先機関として排除の対象になっていた孔子学院について、バイデン氏は規制緩和の方向に動いています。気候外交で歩み寄るために中国が反発する政策を一つ、二つと取り除くことになり、気候外交を他の外交交渉から切り離すなど不可能です。

 事実、中国側も中国政府のツイッターに「中国は気候変動で米国と協力する意向だ。しかし、そうした協力が全体的な米中関係から影響を受けずにいることはできない。中国の国内問題に介入し、中国の利益を損ねながら、国際問題で中国の支援を要請することは不可能だ」と投稿しています。

 中国からすれば、パリ協定への復帰を宣言しているバイデン政権が気候外交という餌に食いついたことで、米中関係を中国に有利にするようにリセットできると受け止めているのは確かです。

 ボルトン氏は「米国はアジアの友人たちの動きも無視することはできない」とし「インドは国際的な気候変動の規制強化や、米国が対中姿勢を弱めることには抵抗するだろう。日本は気候変動問題でバイデン氏の立場により近いかもしれないが、安全保障に関わる(中国側への)大幅な譲歩には反対する」と指摘し、バイデン環境外交は容易でないと締めくくっています。

 ボルトン氏は指摘していませんが、中国はこの数年、国内で中国共産党の求心力を高めることに大いに役立つ大国志向が驚くほど明白です。アメリカからの「頼まれごと」に、ただで応じることはないでしょう。気候外交でバイデン政権が腰砕けになることが懸念されます。

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