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 東京五輪・パラリンピック組織委員会の会長に18日、五輪相だった橋本聖子氏が就任しました。同氏が2014年のソチ冬季五輪の閉幕式後のパーティーで、20歳の日本人スケーターにキスしたというセクハラ疑惑を報じたフランス通信社AFPは、彼女を「男女共同参画の擁護者」と報じました。

 森前会長の「女性のいる会議は長い」発言で騒動が起きた時、女性の地位向上をめざすフェミニストたちは、世界の批判を利用し、ここぞとばかりに日本の古い体質を批判しました。確かに世界が注目し、あらゆる平等を理念として持つ五輪には、森氏の失言は不用意過ぎました。

 実際、このブログにも何度が書きましたが、オランダの社会心理学者ヘールト・ホフステード博士が50年以上、国民性を調査、分析した中から生まれた国民性指標の中では、日本が世界トップクラスの男性中心社会であると指摘されています。無論、同博士のアジア諸国に対する分析は西洋人の目で見たもので正確性に欠く部分もあります。

 それでも少子化対策を軽視し続ける自民党政治を見ると、男性中心社会の上にあぐらをかく保守系議員が多いのも事実です。少子化の原因は女性の高学歴化による社会進出と関係があることは確かですが、女は家で子供を産み育てればいいという保守系高齢議員の考えは通用しないはずです。

 男女共同参画と少子化対策の方向は、出産、子育てする女性が働きやすい社会システムを構築することなのは明白で、働き方改革のコアな部分です。AFPは、橋本氏が以前の発言で、国会会期中に同氏は結婚し子供を出産したことについて「会期中の議員が結婚することは、当時すでに型破りで、その後、子供を出産したことは完全に周囲の想像を絶するものだった」というコメントを紹介しています。

 その事実は1990年代の話で、そんなに昔の話ではありません。それほど社会を変えることは容易でないことを示しています。それに森発言は「女性蔑視の後進性を表し、先進国とは思えない」というのも的外れで、新興国、途上国でも日本以上に女性は活躍しています。

 とはいえ、一言で女性蔑視といいますが、では、先進国には存在しないかといえば、そんなことはありません。今回の一連の報道に関わったフランス人のジャーナリストによれば、実は日本人のモラルの高さに感心したともいっています。

 たとえば、フランスでは当時、国際通貨基金(IMF)の専務理事だったフランス人のストロスカーン元仏財相が、売春パーティー疑惑で辞任に追い込まれました。その時、本人は裁判になるまで抵抗し、辞任に追い込むのは容易なことではありませんでした。売春は女性蔑視のレベルを超えています。

 ハリウッド女優が映画プロデューサーや監督のセクハラ被害にあっている実態が浮上し、#MeToo運動が起きましたが、そこでも加害者は裁判で潔白を主張し、有罪が確定するまで時間が掛かり、今は係争中のケースは少なくありません。欧米では、コロナ禍でDVが多発し、被害にあう女性が急増しました。

 フランスでは男女の問題は、プライベートな問題として扱われていますが、オランド前仏大統領は、パートナーがいながら、若い女優のもとに、大統領警備員の乗るスクーターの後ろに乗って通っていました。浮気さえも問題にしないわけですが、女性に心を傷つていることに違いはありません。

 ところが日本では、女性差別ととられる失言をしただけで、袋叩きにされ、短期間で自ら辞任する事態になったこと自体は、国内では「遅すぎる」という意見もありますが、フランスから見れば驚くほどの迅速さです。それも2人しかいない女性閣僚の1人を当てたということもニュースになりました。

 今は過去に比べ、日本語に堪能な外国人特派員が多いため、通訳や翻訳者を介して取材する時代は終わろうとしています。しかし、彼らが公正な報道を行っているかは別です。自国で出来上がったステレオタイプの日本のイメージに沿って記事を配信する特派員は少なくありません。

 それにネット時代で、メディアで報じられた第一情報が独り歩きすることも多発しています。読者におもねる記事を書かなければ商売にならないという事情もあります。日本でもコマーシャリズム先行でメディアは反権力の大衆心理を利用し、袋叩きにする傾向があります。

 日本は日本についてのネガティブ報道に敏感で、それを取り上げる自虐報道が多いのですが、実は日本人が気がついていないことの1つは、基本的な日本の評価は非常に高いことです。経済大国を維持して長く、信頼できる質の高い製品を世界に提供し続け、政治的な安定も評価されています。

 日頃、国際報道に登場する犯罪者に日本人は少なく、社会的モラルの高さでも評価を受けています。だからこそ、小さな汚点を見つけて報じている面もあるわけです。フランス人の知人ジャーナリストは「日本のような潔さと高潔さがあれば、フランスも発展できるのに」といっています。

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