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 今、世界の政治指導者が直面している問題は経済でもなければ、軍事的脅威でもなく、公衆衛生の安全保障問題です。政治家たちは新型コロナウイルスの感染症大流行を抑えられれば得点を稼げる一方、抑え込むことができなければ、次の選挙を生き延びるのは難しい状況です。

 菅政権の支持率低迷も、他国と違い有事の時に利用できる国民の行動の自由を規制する法律がない、つまり武器を持たない戦いで苦戦しており、国民のいら立ちは強まる一方です。それでもワクチン接種が迅速かつ確実に実行されていれば安心感も与えると思いますが、そのもたつき感はワクチン接種が出遅れた欧州連合(EU)と比較しても驚く遅さです。

 政治家は国として解決すべき課題に優先順位をつけて取り組むのが仕事ですが、特にクライシスマネジメントではリーダーシップが問われます。今の日本は優先順位も見えず、リーダーシップも大いに疑問視される状況に映ります。

 今回の世界的コロナ禍で最も顕著なのは、事態を正確に把握し、適切に対処するより、強がりや威勢で政治を行っていたポピュリズム政治家の立場を危うくしていることです。その典型がトランプ前米大統領の落選です。個人的にトランプ政権に共感する部分もありましたが、コロナを甘く見たことは敗因だと見ています。

 思わぬ角度から弾が飛んできて、大したことはないとたかをくくった姿勢は、ポピュリスト政治家の弱点ともいえるものです。他のことでどんなに得点を稼いでも国民の生命を守れなければ政治家は終わりです。バイデン陣営が様々な不正を大統領選で働いたのは事実かもしれませんが、それでも支持が圧倒的なら勝てたはずです。

 今、次期大統領選で再選が危ぶまれる人物の代表はブラジルのボルソナロ大統領でしょう。理由はコロナを甘く見て適切な対策を講じなかったからです。インドのモディ首相も3日間の新規感染者が100万人を超える状況では、指導力が問われるでしょう。

 フランスのマクロン大統領も来年春の大統領選を控え、再選を危ぶむ声があがっています。4年前の大統領選挙の決選投票で極右・国民連合のルペン候補と一騎打ちになったマクロン氏は、極右の政治家を選ぶわけにはいかないという流れで、けっして積極的な意味で選ばれた大統領ではありませんでした。

 30代のエリートで金融出身のマクロン氏もルペン氏に劣らないポピュリズム政治家といわれました。結果的に支持率が低迷しているところをコロナに襲われ、今も苦戦状態で、次期大統領選の相手はまたもやルペン氏になりそうな状況です。

 変異種が次々に現れるコロナ禍で、どの国の政治家も圧力に晒されていますが、少なくとも勢いだけで、リスクマネジメントができない政治家は支持されない可能性は高いでしょう。経済減速を最低限に抑え、コロナ禍を収束させる新たなリーダーの素質が問われています。

 いずれにせよ、ポピュリズム政治家を選んだ国民は、コロナ禍で学習し、科学者の意見を無視し、絵に描いたような実現不可能な夢を語る政治家は鳴りを潜めるしかない状況です。さらに権力を乱用する権威主義者で問題解決できない政治家も敬遠されるようになることも期待します。

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